【1年生の岩波新書感想文】『テロ後 : 世界はどう変わったか』


著者情報等藤原帰一編、岩波書店、2002.
寄稿者名1年生 長谷川 絢美(2012年6月)
本学所蔵なし
2001年9月11日の同時多発テロで多くの一般市民を含めた数千人が死傷した。米国の旅客機が三機ハイジャックされ、ニューヨークの世界貿易センタービル二棟と国防省へ衝突した。それは世界を震撼させ、当時小学生だった私もテレビ画面を通して、砂煙を上げて崩れていく建物の映像を見た記憶が今でも鮮明に残っている。
 私は『テロ後:世界はどう変わったか』を読み、赤十字の平等や中立といった立場がどれだけ重要であるかを感じ、自分がどんな立場にあっても、困っている人を差別なく助けたいと改めて強く思った。
 貿易センタービルへの旅客機衝突によって、日本人を含む多くの一般市民の犠牲者を出したこの同時多発テロは、実行したテロリストやその国の宗教的な考え方にすべての問題があると、私はこの本を読むまで思っていた。しかし、この本を読んで自分の考え方が変わった。同時多発テロ後、米国が「これは我国、アメリカへ対する戦争だ。」と宣言し、多くの国がそれに賛同した。そしてそれは、「世界に対する戦争」と言われるようになり、1ケ月後には米国によるアフガニスタンへの空爆が始まった。同時多発テロの米国での被害ばかりに注目が集まっていた当時、私は米国の空爆について何も知らず、大きな関心もなかった。しかし、今回この本を読むことで、どちらの側にも一般市民を含めた多くの犠牲を受けた人たちがいることに気づくことができ、改めて考え直すことができた。そして、傷を負った人たちに敵も味方もないことに改めて気づくことができた。
 米国に住む人々にとって、貿易センタービルへの旅客機衝突の同時多発テロは攻撃であった。しかし、アフガニスタンに住む一般市民にとっては、米国の空爆こそが攻撃であり、どちらの側にも一般市民を含めた多くの犠牲者が出た。しかし、どちらも自国側の犠牲を多く語り、相手国の犠牲について無視はしないという配慮を示しつつも、触れようとしなかった、と本書にはあった。どちらの側にも犠牲になった多くの人がいる。私はそれを忘れてはならないと思った。だからこそ、赤十字の原則の下で差別なく多くの人を助けたいと思った。医療に携わる者として、差別なく目の前の苦しんでいる人を助けることで、信頼を得られ、活動することができる。だからこそ、赤十字は世界中の国に設置され、自然災害や内戦などの被害を受ける多くの国で活動することができているだろう。
 日本を含めた先進国はアフガニスタンだけでなく発展途上国の復興や発展のための援助を行っている。復興支援会議を行い軍隊の派遣を行ったり、経済援助など様々なことがあるが、軍が撤退した後、経済支援が終わったときに、その国が自らの力で発展していかなければならない。私は国に対する経済援助も届かずにいる人たちの生活環境の改善や健康に対する意識の向上の手助けをしたい。そして看護師として様々な地域で病気に苦しんでいる人たちの治療、また心身的なサポートに全力を尽くしたいと考えている。
今は、赤十字の大学で看護学を学び始めたばかりだが、赤十字の下で様々な考え方や看護師としてのあり方を学びながら、これからの四年間で自分の目標を現実にするために様々な体験、経験を自分のものとして吸収していきたい。そしていつか、赤十字原則の柱となっている人道が、それを呼びかける人たちがいなくなっても、生活の中で当たり前となっていくような世界になることを願っている。そのためにも、赤十字という組織に関わることができた私は、いざという時に自ら立ち上がることができるような人間になり、少しでも多くの人の力になりたいと思った。
 今回、本書を読んで、将来、発展途上国などの国で看護師として働きたいと考えている自分にとって看護の知識や技術だけでなく、相手の文化や宗教的な考え方も尊敬することが大切であると気づくことができた。その上で看護師として、多くの人の力に少しでもなれるよう一層の努力をしていこうと強く決意した。


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      喜多学長が、新入生に課題として出された「岩波新書の感想文」を
                シリーズで掲載しています。
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