『アルジャーノンに花束を』


著者情報等ダニエル・キイス著、小尾芙佐訳、早川書房、1989.
寄稿者名講師 石田 智恵美(2009年10月)
本学所蔵http://opac.jrckicn.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=33984
②アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス著

 すでに読んだ人も多いかもしれない。

 主人公のチャーリィは32歳だが,幼児の知能しかないパン屋の店員である。店の同僚からもばかにされることが多いが,そんなことにも気づかず,仲間と一緒に彼なりに楽しく生活している。そんな彼に「頭をよくしてくれる」という話が舞い込んだ。チャーリィは手術を受け,天才に変貌する。「アルジャーノン」は,同じ実験を受けて、「天才ねずみ」に変貌した「ねずみ」の名前である。チャーリィは、アルジャーノンと同様に超知能を手に入れ,今までに「わからなかったものが,わかるようになった」。

 物語は,チャーリィの書いた日記形式で進む。「けえかほうこく1 3がつ3日」から始まる、ひらがなや誤字も多い日記に、だんだん漢字が増え,誤字が少しずつ減る。手術の効果は明らかである。ところが一方、一足先に手術を受けたアルジャーノンは、一定レベルの知能に達したあと予期できなかった異変を起こす・・・・・

 日記の最後に書かれた「ついしん。どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやてください。」の文字を見るたびに,私は涙が止まらなくなる。泣きたいだけ泣ける時間と場所がない限り,開いてはいけない本でもある。