『アイ・ラブ・グランパ : 100の理由 : おじいちゃん大好き!』 『アイ・ラブ・グランマ : 100の理由 : おばあちゃん大好き!』


著者情報等グレゴリー・E.ラング、ミーガン・ラング文・写真、村松ひろこ訳、学研、2007.
寄稿者名大学院2年生 柴田 幸子(2012年7月)
本学所蔵なし
「私のすすめる一冊」というコーナーで、あえて2冊を推薦するのは、多くの物事は両極の要素があって初めて全体性を保つのだという、人としても、看護師としても、心に留めておかなければならないことが、2冊をあわせて読むことによってよりよく実感されると思ったからである。
 この2冊は、グレゴリー・ラング(父)と、ミーガン・ラング(娘)という親子の手になるもので、『グランパ』には祖父を愛する理由を述べる、『グランマ』には祖母を愛する理由を述べる、様々な人の言葉が編まれている。「必要なときに導き、立ち向かう勇気を与えてくれる存在」と祖父を心の支えとし、「安心して秘密を打ち明けられる」と祖母を慕う孫たちの言葉を読んでいると、何だか温かい気持ちが湧いてきて、家族や古い友人に手紙を書きたくなってくる。この2冊は、人は誰でも、周りの人々に育まれて大きくなったのだということを思い出させてくれる。そして、私たちを育むためには、「父性」と「母性」の両方が必要だったのだということに、改めて気づかせてくれる。
 看護師と患者の関係も、いくぶん、祖父母と孫との関係に似てはいないだろうか。祖父母が孫よりも多く持っている人生経験と肉親としての情を背景に孫の成長を支えるように、看護師も、疾病や健康についての専門的知識とプロとしての誠実さを背景に患者の回復を支える。人を支えるのであれば、看護師にも、「父性」と「母性」の両方が必要であろう。看護職は圧倒的に女性が多いという現実はあるが、看護師は、女性であるか男性であるかを問わず、ときには「父性」を、ときには「母性」を発揮できる、偏らない感性を持っていなければならないだろう。
 この2冊の本は、心を癒してくれるだけでなく、看護職の心の持ち方にも示唆を与えてくれる。私がこの本を手に取ったのは、在宅看護の先駆者であり本学でも教えてくださっている村松静子先生の紹介文を読んだからだったのだが、確かに、村松先生の「(この本には)看護に必要な要素が書かれています」という言葉通りの本だった。本学の図書館にもシラバス指定図書として所蔵されている。授業や実習の合間にぜひ手にとってほしい。