開催日20100513
テーマバングラデシュってどんな国?
講師JIICAバングラデシュ事務所 次長 牧本小枝氏

バングラデシュってどんな国?

 

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本年度第2回目のランチョンミーティングを、JICAバングラデシュ人民共和国(以下バングラデシュ)事務所次長の牧本小枝氏を講師に迎え5月13日に開催いたしました。
牧本氏は保健学の専門家で、95年よりJICA医療協力部所属となり、WHO西太平洋地域事務局を経て、08年にバングラデシュ赴任という、国際的経歴の持ち主です。講演では、バングラデシュの医療保健問題とそれへの取り組みが、環境、経済、文化、宗教などの社会的背景と関連付けて語られ、学生にとっても教職員にとっても、国際医療活動の実情を知るまたとない機会となりました。

バングラデシュの数々の問題の根幹にあるのは、地方におけるインフラ整備の遅れです。地方の医療事情を少しでも改善すべく、1カ月に1回専門家が民家に出張して妊婦健診を行なう、緊急時に患者を運ぶ自転車が村に設置されている、などの対策が取られているということですが、近代化の進んだ都市部との格差は非常に大きいとのことでした。

ジェンダーの問題も医療問題に影響しています。イスラム教徒の国、バングラデシュでは、女性が家や村から出ることを男性が許さない習慣があり、そのため、女性が治療を受けられず命を落とすこともあります。

地方の医療スタッフの不足も深刻な問題です。有資格の医療者が絶対的に不足しているいのですが、中でも看護師数は医師数より少ないとのことです。そうした状況の中で、当然ながら出産は自宅分娩が主となっていますが、出産介助の90%は無資格者が行っていて、妊産婦死亡率も乳幼児死亡率も高いという状況が生じています。

このように牧本氏は、保健医療問題にはインフラ整備はもとより、宗教や文化的背景に基づくジェンダーの問題、保健医療スタッフの人材育成問題などが複合的に関連しており、その解決には、環境、経済、政治、教育、文化、宗教などのすべての因子を考慮する必要があるということを、バングラデシュを例に非常に明晰に提示し、最後に学生に対して、是非将来国際協力の現場で看護師として貢献してほしいと訴えられました。

今回のミーティングは立ち見が出るほど多くの学生や教職員が参加し、皆真剣に聞き入っていました。質問も多く出て、時間が足りなくなるほどでした。国際活動に携わる方の話を直に聞くことのできた学生たちは、国際活動を身近に感じ、自身の将来の選択肢の一つとして考えるきっかけを得たことと思われます。今後も様々な方をお迎えする予定です。