動かなければ始まらない

 この夏、本学の吹奏楽サークルは停滞していた活動の再開を期し、楽器購入のためのクラウドファンディングを立ち上げました。新たにメンバーを募集し、顧問を含めた有志の教職員とともに一丸となって取り組んだのです。結果は無事目標額を達成し、念願だった打楽器を購入する目途がたちました。このプロジェクトを通して、学んだことはたくさんあります。そのなかでもっとも大きなことは、タイトルにもあるように、自ら動かなければ何も始まらない、ということです。
 最初は、クラウドファンディングということばは知っていても、誰もが未経験で、右も左もわからないところから始まりました。ひとつひとつ運営会社の担当者の方に教えていただきながら、アカウントを作り、サイトを作り、広報活動をしてきました。その過程においては、学生さんならではの学びもありました。
 例えば、サイト内の活動報告は回を重ねるごとに読む人にとっても読みやすく、同時に、報告に掲載することを許可してくださった事業主の方のメリットにもなるようなものになってきました。また、最初はチラシの掲示をお願いして断られたら、それで諦めていましたが、店内掲示ができなければ職員の方々にご支援をお願いするようになりました。企業の担当の方が、真摯に学生の話を聴いてくださったことも貴重な経験になったようです。
 本プロジェクトにご支援くださった、他大学の先生からは「看護学生だからと言って、普通の大学生が経験することを制限するような風潮を、ぜひ打破してください!」というメッセージをいただきました。本当にその通りだと思います。看護の道を選んだことで、諦めなくてはならないようなことは極力減らさなくては、と思うのです。
 わたしが看護学校に行っていた頃、寮はありましたが強制ではなく、通学も選べました。でも、その数年前までは全寮制で、学生は24時間管理された生活を送っていました。今はそういう時代ではありません。誰もが自由に人生を選べる時代になったのです。もちろん、職業に就いたらどんな職業でも私生活での制限はあります。お給料をもらっているのですから、ある程度の節制は当然です。でも、学生さんは学費を払って学びに来ています。学びとは看護師になるための知識・技術だけではありません。青年期の貴重な4年間に、その後の人生に役立つような、なるべく多くの経験をしてもらいたいと思うのです。そうでなくては若い人は看護を選んでくれないでしょう。
 本学は通学が不便なところにあり、近くにコンビニもなくて決して満足度の高い環境ではありません。サークル活動にしても、全体の学生数が少ないのでメンバーは小人数になりますし、あまり予算も割り当てられません。でも、そのような環境だからこそ、自ら学生生活をよりよくするために動いて欲しいのです。吹奏楽サークルのクラウドファンディングでは金銭的な支援だけでなく、続々と楽器の寄贈が届きました。ひとは動いている人を応援してくれます。大学生活の4年間は長いようであっという間です。いろいろ不満もあるでしょうが、自分で満足度を上げる努力をしましょう。吹奏楽に続くサークルを期待しています。

クラウドファンディング成立画面
【クラウドファンディング成立画面】