Humanism のあとに続くのは

あじさい6月にはいり、あじさいの花があでやかに咲き誇る季節となりました。今年は例年と比べて梅雨入りが遅く、晴れたり曇ったりの穏やかな日々が続いていますが、梅雨の終わりの大雨による水害が起きなければいいですね。
 さて、本学学長に就任して2か月余りとなり、赤十字の理念や本学の建学の精神などを念頭におきながら、大学運営について考える日々ですが、先日、米国の看護理論に関する書籍1) を読んでいたところ、最新の看護の価値観を書いてあるセクション (p.44) に ”to decenter the human” というフレーズを見てびっくりしました。えっ、どういうこと?国家中心や会社中心ではなく、人間を中心に考えましょう、という社会になったと思ったのに逆戻り?と思ったところ、違いました。
 このセクションタイトルは DECONSTRUCTION AND POSTMODERNISM。そして、このフレーズが書かれている段落は Posthumanism がテーマです。直訳すると「人間中心後主義」ですね。さて、人間中心主義の次に来るものは何でしょう。





 人間を含めた地球全体のことでした。よくある表現を当てはめるとすれば環境問題注)ですね。どうですか?わかりましたか?もしかしたら、こういう問題は学生さんたちのように若い人が得意かもしれませんね。わたしたちの年代だと、国のために命を捧げた人たちの話を聞いたり、会社のために命を削って24時間働くことが美化される時代を経験したりしていますので、Humanism が進化した考え方だと思ってしまいます。ですが、学生さんたちは生まれたときにはすでに Humanism が社会に浸透しており、その上で高校までの学校教育で環境問題や SDGs の勉強をしてきていますので、わたしたちよりずっと Posthumanism の考え方が身についているのではないかと思います。
 人間中心主義はもう古い。人間のことだけでなく、地球上のすべての生き物や物質、ひいては宇宙についても等しく思いを寄せるようにしましょう。
 学生さんたち若い人たちから学びつつ、わたしたちの考え方も進化していかなくてはいけないということを痛感した出来事でした。

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1) Chinn PL, Kramer MK, Sitzman K. (2022) Knowledge development in nursing-Theory and process (11th ed.) Elsevier, St. Louis.

注)Posthumanism についての考え方はほかにもあり、ここで紹介したのは 1) の書籍に書かれている考え方に基づくものです。