学長室便り No.4 備え、育む「防災・減災」

今夏は、度重なる台風の直撃で日本各地に大きな被害がもたらされました。温暖化の影響による台風や大雨は、他人事ではなく、自分事として多くの国民が実感するところです。今こそ、「防災・減災」について全ての人々が知恵を出しあい、持続可能な社会へ導くマイルストーンが必要とされています。

私は、9月7日・8日に開催された日本学術会議による「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議2023 -壊滅的災害に対してレジリエントで持続可能な社会への変革-」に参加しました。地球規模で広がりを見せている環境破壊など人類が直面する困難な問題を解決するためには、科学的な蓄積を動員して持続可能な開発(Sustainable Development)を実現する必要があり、このような状況にかんがみ、日本学術会議では、近年、持続可能な開発にかかわる具体的な課題に関する会議を毎年開催されてきました。今回の会議の目的は、「関東大震災後100年間に我が国が経験し学んできたことを、巨大地震、津波、巨大サイクロン等で被災した国や地域の経験と合わせて振り返り、国際社会と共有し、伝承し、国際協力の糧とすること」でした。

関東大震災をはじめとする我が国の壊滅的な災害から得たレガシーを学び、持続可能な社会に必要なシステムづくり、教育、政策などが検討されました。画期的な科学技術の発展により、地震発生確率の長期評価、それに基づくハザードマップの作成・更新、将来の地震に対する地震被害予測や地震速報のリアルタイム地震動予測手法の開発が進んでいます。さらに、気候変動に伴う熱波や豪雨、洪水などの気象災害の頻度や激甚化が予想できる時代となっています。これらの発展を生かすには、二つの力が必要とされています。一つは、「国際協力」です。被災国、被災地域に限定した防災・減災ではなく、情報の共有・活用、リソースの活用や支援、経済・社会的変動に対する備えや対応についてグローバルな視野で検討し、ローカルに対応することです。もう一つは「自分事としてリスクに備える」ことのできる社会づくりです。会議では、dignity of risk(壊滅的災害を乗り越えるレジリエンスを確保する社会へ変革するために、一人ひとりが、個々人の自らのリスクに対する選択が、結果として不利益に至る可能性があるという自覚)を持つことの重要性が指摘されました。自分事として、壊滅的災害の発生リスクを正しく理解し、適切に対応することを今一度心しなければなりません。

最後に、私が、この会議での式辞として本学の取り組みを紹介した内容を記しておきます。

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「危機の時代に、持続可能な社会を発展させるためには、危機へ備えるためのリスク教育やケアの開発が必須と考えます。九州の地方都市にある、私の大学では、これまで、近隣を含め大きな災害を経験してきました。赤十字の人道理念に基づく看護を学ぶ学生たちは、防災・減災をめざし、自主的に、数多くのボランティア活動を興し、その使命を後輩へとつなげています。地域の高齢者とともに災害リスクマップを作成し、「互近助の力(ご近所同士で、情報共有し、互いに気遣い、配慮することを通してコミュニティにおけるつながりや安全を確保すること)」を駆使して、認知症高齢者の方々の避難訓練を実施することなど、知恵とつながりを創っています。このように、人々の命と尊厳を守る活動は、身近な人々に目を配り、対話するという経験の積み重ねにより培われるものです。
 自然災害であれ、大規模感染症であれ、危機は国を超えて、多発的に起こっています。したがって、リスクや災害への備えについては、グローバルな視点から学ぶ機会が必要です。本学では、海外協定校との間で、災害看護について学びあうプログラムを展開しています。今夏は、インドネシアの学生が本学の学生とともに災害看護の実践を行いました。両国の災害対策の特徴について福岡の離島に赴いて、地区探索を行い、そのうえでその地区の防災・減災を検討する研修を行いました。両国の学生は、異なる視点から、互いの意見を交わすことで、自分たちだけでは見えなかった課題や解決の糸口を見出す体験をしました。つまり、リフレクティブに自国の防災・減災の対策を検討する機会を持つことができるわけです。多様性の中でリフレクティブに学ぶことが今後のリスク教育には必須と考えます。」

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これからも、学内外において、備え、育む「防災・減災」についてともに考え、行動していきましょう。