未来を生きるための学び:幅広く世界に目を向けよう

   短い夏休みが終わり、実習や演習が始まるころを迎えています。感染力の強い新型コロナ オミクロン株亜系統BA.5が猛威を奮っているため、皆さんは感染対策を万全にする必要がありますが、学期中には体験できない多様な人々との交流が広がったと思います。ぜひその体験を、学内でシェアください。毎月第3火曜日はオープン学長室を開催していますので、私にもお裾分けください。
   私が夏の間に学んだことのいくつかをお裾分けします。
   一つは、京都大学の北島薫先生の講演についてです。北島先生は、熱帯林環境学が分野の第一人者です。熱帯林は、生物多様性の宝庫としてよく知られ、その多様な自然産物は、地元住民はもとより世界経済に大きく貢献すること、さらに、熱帯林は、全休レベルでの炭素や水の循環、そして、気候の制御にも大きな役割を担っているとのことです。しかしながら、近年、発展途上国における森林減少および森林劣化が進行しており、それが気候変動を助長し、さらに土地劣化がすすむという負の循環系をもたらしているという現実を科学的なデータとして鮮明に示され、衝撃を受けました。「プラネタリーヘルス」の重要性については、すでに学長室だよりでお伝えしましたが、今まさに、自然の営みとして陸と海で行われている生態系の保全により地球全体の相互連関を守ることが、未来を生きる人々の使命と再確認しました。
   二つ目の講演は別の会議でお聞きしたことがですが、北島先生のお話に密接に関係しています。北里大学名誉教授髙井伸二先生よる、「我が国の動物検疫と感染症:野生動物を取り巻く30年-生息数・生息域の拡大の背景と原因-」の講演です。このお話は、本学でも直面している課題です。すでに、大学周辺に出没するイノシシの危険について皆様には注意喚起をお願いしたところです。その背景には、やはり自然の生態系の破壊があります。わが国では、イノシシやシカなどの野生動物が数倍に増加しており、生息地の奥山から人が暮らす地域にえさを求めて出没しています。奥山の裾野にあたる里山の放置や劣化が進んだことや森林伐採後の人工林など、温暖化と相まって、餌場がなくなってきたことが原因の一つということです。自然を守るとともに、共存する野生動物の管理も必須となっているのです。外来動物、例えばアライグマ、コウモリなどの移動性の哺乳類が野生化することにより、ブタやウシ、ネコやイヌなどの動物と接触し、種を超えてウイルス感染を起こしうる、という脅威も迫っています。
   人々の健康と幸福を育む大学として、皆さんには、看護学を基盤としつつ、人々が生活する世界に幅広く目を向け、関心をもち、学びの輪を広げていただけることを期待しています。そのために、多様な学問分野、世代、地域の人々との交流が必要であり、大学としてその機会を広げる取り組みを進めたいと思っています。

   さあ、心身ともリフレッシュして健やかに新学期を迎えましょう!

2022年9月
学長 小松浩子