2020年度 学長室便りNo.1 新入生ガイダンスでのメッセージ

 大学キャンパスの桜が入学を迎えられた皆様を歓迎するように咲き誇っています。

 2020年に入学を迎えられた看護学部103名の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。そして、入学を迎えられた皆様をこれまで育んでこられました保護者の皆様には心からの労いとご入学のお祝いを申し上げます。

 今年度は、政府の新型コロナウイルス感染症対策に関する基本方針を踏まえ、感染拡大が懸念されている現状に鑑み、入学式を中止することと致しました。入学式を心待ちにされていた新入生ならびに保護者の皆様にとって、このような事態になりましたことは大変残念ですが、皆様の健康と安全、感染拡大防止を最優先に考え、中止の判断に至りましたことをご理解いただきますようお願い申し上げます。

 世界規模で新型コロナウイルス感染症の猛威が広がる中、赤十字の人道理念のもとに創設された本学の使命は極めて大きいといえます。2001年開学以来、1700人を超える卒業生が、我が国のみならず世界各地の保健・医療の場で専門職として、この世界的感染症に立ち向かっています。「全世界の一人一人の生命と尊厳を守る」ために人々の看護に尽力している先輩たちを育んできたこの学び舎で学生生活の一歩を踏み出すことに、誇りと気概をもって頂きたく思います。

 ウイルスという目に見えない敵は、命にかかわる感染症をもたらし、知らない間に感染が爆発的に広がり、医療崩壊や社会混乱をもたらす恐れがあります。大きな脅威にさらされる中でも皆さんに安全に安心して学んで頂ける環境を整えるべく、現在、教職員をあげて最善の対策の検討を続けております。ノーベル賞受賞者の山中伸弥博士は、「新型コロナウイルスとの闘いは短距離走ではありません。1年は続く可能性のある長いマラソンです。」と述べ、一人一人が、それぞれの家庭や仕事の状況に応じた最速ペースで走り続ける必要があるとしています。皆さんには、看護・保健・医療を学ぶ学生として、ぜひ、賢い判断力と適切な行動のもと、この危機を乗りこえて頂きたいと思います。ウイルスという見えない敵と闘うために、2つの目を持っていただきたい。一つは冷静に科学的に見る目です。まずは、ウイルスの正体を理解することです。これから、微生物学や免疫学、病気の成り立ち・病態学などを学ぶことで、なぜ、三つの密(密集、密閉、密着)を避けるべきか的確に周りの方々にお教えすることができるはずです。無菌操作や安全ケアなどのケア技術を身に着けることで自身の安全のみならず高齢や慢性病をもつリスクの高い人々を援助することができるようになります。もう一つの目は、「気」を感じ取る目です。人間は脅威に晒されると不安や恐怖が強くなりストレスフルな状況に陥ります。ストレスにより副腎からコルチゾールというホルモンが作られ、これにより免疫細胞の機能が低下します。自分の「気」を感じ、時には緊張をとり、リラックスして心を消耗しないようにしてください。特に、体内時計を狂わさないで、生活リズムを守り、食べること、眠ることを大切に日々を過ごしてください。他の人の「気」を感じ取ることも忘れないでください。危機の中で孤立し、不安や恐怖を高じている人、生活に必要な環境が整わず生存を脅かされている人の「気」に心を寄せることができるよう在りたいと思います。原則に立ち返り、自身の行動に責任を持ち、social distancingを維持しつつ大切な人々へ感染させないための最新の注意を払ってください。
 私たちは、いまだかつてない危機に直面しています。この危機は一人では、乗り越えることはできません。不確実で目まぐるしく変化が起こる中、つながりを感じることで前に進む勇気や力を沸かすことができます。友人や家族、そしてこの学び舎に集う人々が暖かく支えあう仲間であることを、交わすまなざしや何気ないやり取りから感じることができると思います。つながりにより、レジリエンス(回復力や耐える力)を高めて参りましょう。

 本日入学された皆さんが、様々な体験の中で、個々の学びが深まり、実りあるものになるよう、私ども教職員一同、力を合わせて支えていく決意であることをお伝えいたしますとともに、本学の関係各位におかれましては、これまでにも増してご指導・ご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

                           2020年4月3日
                           日本赤十字九州国際看護大学
                             学長 小松 浩子

*学長 田村 やよひの退任に伴い、令和2年4月1日付で小松浩子が本学の新学長として
 就任しましたので、お知らせいたします。
 学長挨拶は、こちらからご覧いただけます。