国際保健・看護Ⅲ アイルランガ大学に短期留学しました

国際交流協定であるインドネシア共和国にあるアイルランガ大学に短期留学した2名は、新型コロナウィルスへの感染予防対策を徹底し健康管理に努め研修を行いました。帰国後も細心の注意を払い、現在も健康状態に問題はございません。

科目担当 責任者

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私たち国際看護コースを履修している2名は、選択履修である国際保健・看護Ⅲのプログラムで、「国内外の健康問題を多角的に探究し、保健医療、看護の役割・課題について考察する」ことを目的に、各自が関心のあるテーマを設定し、2月23日から3月7日までの約2週間、インドネシア共和国のスラバヤにある国際交流協定校のアイルランガ大学にて研修を行いました。

平石のテーマは「肥満予防と看護の役割」です。肥満は糖尿病や脳卒中、虚血性心疾患を引き起こす要因の一つであり、インドネシアでは近年肥満が増加し、それらの疾患が死因の上位を占め、日本でも肥満者数が横ばいであるため、両国共通の問題であると考えこのテーマに決めました。

肥満の主な原因は過食や偏食による過剰なカロリーの摂取と運動不足による消費カロリーの減少であり、インドネシアでも食の欧米化や車社会による運動不足が問題となっています。そのため、食事と運動の予防教育に関して調べようと考えました。

熱帯雨林気候にあるインドネシアの年間の平均気温は27~28度であり、砂糖を摂取すると体温が下がるという言い伝えから、料理の味付けには砂糖が多く使用されています。現地で食した料理は甘いと感じるものが多く、自然と砂糖を過剰摂取していることが考えられました。砂糖の量を減らす調理の工夫や食事指導について質問したところ、昔からある習慣を変えることは難しく、カロリーの低い食材に置き換える方法を指導しているということでした。また、運動に関しては、国家の取り組みとして、毎週末は主要道路を封鎖し歩行者天国にすることで国民に運動する機会を設けていたり、一次医療施設においては、毎週金曜日に健康体操を行っていたりしました。

さらに訪問したDr.Soetomo病院では緩和ケアの一環として、退院後の生活に不安を抱く慢性疾患患者のために、看護の処方箋と称したスピリチュアルケアを導入していました。イスラム教の聖典であるコーランを唱えることで感情をコントロールし、自分自身と向き合いながら治療に臨み、QOLの向上を目指すものであると理解しました。対象のアセスメント、問題の抽出、個別性を考慮した食事・運動の予防教育は両国に共通する看護の役割であり、治療を継続しながら、その人らしい生活を送るために行われているスピリチュアルケアはインドネシアの看護において重要な位置を占めていることを学びました。

4年生 平石 桂子

増元は「HIV蔓延防止のための保健活動と看護の役割」をテーマに学習しました。
インドネシアでは女性の4分の1がHIVに感染していると言われており、女性のHIV感染が注目されています。これは海外に単身赴任している夫がセックスワーカーと関係を持つことでHIVに感染し、それを知らない妻が夫から感染するというケースが多いためです。この構造の背景には女性が社会的に弱い立場にある現状があります。インドネシアでは、女性は結婚すると専業主婦になることが多く、家庭の外からのHIVに関する情報を得にくくなります。また宗教的理由から性的な話題がタブー視され性教育を行うのが難しく、HIVについての知識を得る機会が少ないことから、感染に気付きにくい現状があります。

そこで、スラバヤでは、HIV感染陽性の診断が確定したあと本人の了承が得られた場合は、病院からHIV感染者のパートナーにHIV感染についての説明が行われ、パートナーも検査を受けるように促しています。また病院ではHIV/AIDSに関する教育・啓発活動が行われており、住民に向けた講義を開いたり、誰でも自由に持って帰ることのできるリーフレットを設置したりしています。宗教的理由から性的話題がタブー視されているにもかかわらず、病院でのこれらの介入が受け入れられているのは、医療者という専門職による介入であるからだと考えました。日本でも、公の場での性的な話題はタブー視されていますが、助産師を特別講師として行う性教育は受け入れられています。インドネシアでのHIV/AIDSに関する教育・啓発は、文化的に受け入れられにくい内容ですが、看護職が介入することで、学校での性教育が受け入れられやすくなるのではないかと考えます。

HIV感染には、女性の社会的な立場や宗教的な背景、教育など様々な要因が関わっており、それを捉え介入していくためには保健医療・福祉・教育など他機関との協働が必要だと考えます。その中で人々の生活からその決定要因を捉え、ニーズに合った支援を提供することが看護の役割だと学びました。

今回の研修では、アイルランガ大学での講義や、病院や施設での見学から、多くの学びを得ることができました。この研修での学びを活かし、今後も勉学に励みたいと思います。

4年生 増元 さち

2020.04.01①国Ⅲ
アイルランガ大学看護学部の先生方とステューデント・アンバサダーの学生の皆さん
2020.04.01②国Ⅲ
Dr.Soetomo病院 内科病棟の退院指導の様子
2020.04.01③国Ⅲ
アイルランガ大学看護学部のラボ室