2018年9月7日、「いま、日台の看護職養成は?―グローバル化の波と人口動態の激変を背景に」のテーマの下、本学が交流関係を有する台湾の国立台中科技大学から、保健学部長の陳 筱瑀(Hsiao-Yu Chen)教授と看護学科長の陳 夏蓮(Shiah Lian Chen)教授をお招きし、本学教職員、学部生・大学院生、約45名が参加し、本学主催の第7回国際フォーラムを開催しました。
第一部では、両陳教授と本学部長の中村光江教授に、日台の保健医療制度と看護教育の現状と課題についてご講演をいただきました。日本は2007年に超高齢社会に、台湾は2018年3月に高齢化社会に突入し、次の2点が看護職養成を巡る日台共通の課題として提示されました。1点目は、増大する高齢者人口の多様な医療福祉サービスの供給体制を、看護職を含め減少する労働者人口でいかに支えるか、2点目は、日本における地域包括ケアシステム政策、台湾における地域を重点とした長期ケア政策が推進されるなかで、看護職の役割拡大への期待に対していかに看護教育制度の変革と充実を進めていくかという課題が提起されました。
第二部では、上記3名のスピーカーに小川里美・本学国際看護実践研究センター長が座長として加わり、会場の参加者の意見も包摂しながら、第一部で共有された課題に対する解決策を探りました。国内外の社会的激変が保健医療供給体制の変革を迫る今を、「看護の発展にとっては好機」と捉え、社会のニーズに応えるべく、①看護教員の養成と確保、②様々な教育課程の看護基礎教育の質の向上、③高度実践看護師(CNS, NP)の教育推進、④地域での継続的な看護サービスを提供する人材育成のための教育・研究の推進、⑤博士教育課程の推進と充実が必要であることが、中村教授より提示されました。一方、陳 筱瑀教授から、日本とほぼ共通した課題を抱える台湾、台中市では、長期ケア政策で「幸福長照IN台中―時尚美感、幸福有感」の方針を掲げ、長寿人生をライフスタイルを含め、ファッションによる美の自己表現を楽しみ、幸福に生きようとの価値が推進されている事例が紹介されました。
人類未曾有の超高齢社会において、個人の人権が尊重され、個人の人生を安寧に生きることを支援する保健医療福祉サービスの供給体制をいかに確保していくか、そして看護職の養成は―この大きな課題に立ち向かっていくには、保健・医療・看護・福祉制度の枠組みの転換と同時に、価値観の刷新も必要であることが、今回の国際フォーラムで示唆されました。