月に発生した「九州北部豪雨災害」では、これまでに学生及び教職員が様々な支援活動を行っています。発災から2ヵ月が経過した今、活動の一端をご報告いたします。
7月から8月にかけて、日田や朝倉において、KDNSサークルを中心とした学生ボランティアが、家屋に溜まった泥の掻き出しなどの被災地支援を行うほか、学内外で募金の募金活動を行いました。また、看護教員5名が、日本赤十字社福岡県支部が設置する避難施設救護所内での夜間常駐要員および心のケア要員として被災地に派遣された他、発災直後には、教員の清末定美助教が、福岡県看護協会災害支援ナースとして朝倉市杷木町の避難所内の支援ニーズ調査を行いました。
下記に、学生ボランティアの学部2年生の松本さんと清末助教から寄せられた活動報告を掲載しております。ぜひご覧ください。
≪学生ボランティアの活動≫
7月上旬に朝倉市、東峰村、日田市を中心とした地域に甚大な被害をもたらした九州北部豪雨から2ヶ月が経ちました。現地では、今なお茶色に染まった風景がそのまま残っています。流木が溢れる場所や茶色く濁った水が流れる川、茶色く染まったあの風景は豪雨災害の被害の大きさを物語っています。
私たちKDNSサークルでは、熊本地震の際の活動の経験から募金活動や現地でのボランティア活動を行いました。募金活動は8月3日に本学学内、8月10日に道の駅むなかた、8月24日に博多駅前で行いました。本学の学生・教職員の皆様、地域の皆様など多くの方に募金にご協力頂きましたことに改めてお礼申し上げます。募金活動の際には、「私が現地に行けない分までよろしくね」や「暑い中ご苦労さま」と言った心温まる言葉をかけて頂きました。
なお今回、計3回の募金活動を実施しました。皆様からご協力頂きました募金は全額、日本赤十字社を通して全額被災地の皆様に届けられます。
8月17日には本学学生14名で朝倉市社会福祉協議会を通じてボランティアに参加しました。主な活動内容は、住宅の基礎部分の泥の清掃、窓や網戸の泥の拭きあげでした。炎天下の中、被害を受けたお宅の方、ボランティア団体の方、そして私たち学生と多くの人の力が一つになり作業を進めました。終盤、避難勧告が出たため作業を中止することになってしまい完了することは出来ませんでした。後から聞いたお話ですが、今回ボランティアでお手伝いしたお宅は、その後再建に向けて大きく前進したそうです。主に清掃作業でしたが、ご一緒させて頂いたボランティア団体の方から「清掃というシンプルな活動でしたが、辛い水害を思い返す水害の後を消すという大切な意味があるんですよ」と言って頂きました。僅かながらですが、お力添えできたと思っています。
被害を受けた地域では、まだまだ人の力を必要としています。「赤十字の看護学生としてできることは何か」ということを念頭に置き、様々な形の支援を行っていきたいと思います。今回、募金活動でご協力頂きました方々、現地ボランティアでお世話になった皆様に心から感謝致します。
募金活動を行う学生たち
文責:学部2年生 松本玲子(KDNSサークル所属)
≪福岡県看護協会 災害支援ナースとして派遣された教員の活動≫
平成29年7月13日(木)に、豪雨災害で被害を受けた朝倉市杷木町の避難所における支援ニーズの確認のため、福岡県看護協会災害支援ナースとして現地調査を行いました。調査は始めに医療・福祉の災害対策本部のあるピーポート甘木で全体ミーティングのあと、巡回保健師間の引き継ぎを聞き、避難者の生活情報や要支援者の情報をとり、2か所の避難所(らくゆう館と久喜宮小学校)を巡回する保健師に同行しました。
発災後1週間が経過している状況で、行方不明者の捜索も行われる中、避難所には自宅が全壊・半壊した避難者が生活をされており、両避難所とも、運営自体は県内各市町村からの応援職員の協力を得ながら、朝倉市職員を主になされていました。また、地域の自主組織の方々も自治体職員とともに、入居者への対応や物資の管理を行っていました。避難所自体の被害はないものの、周囲の道路は泥水が乾燥した土埃が舞っており、ライフラインは水道が停止したままで、生活用水は水供給車が避難所の入り口に常駐し汲み上げながらの状態でした。電気の普及とともに環境調整への支援は始まっていたため、冷房や冷風は整っていました。また、避難所内の自主組織や避難者の中からのボランティア活動もあり、トイレの清掃や居住空間と食堂の完備、男女別の更衣室は設置されており、管理の行き届いた避難所のように見受けられました。入浴については、自衛隊によるお風呂の設置や近隣の温泉浴場の無料開放がなされ、多くの避難者が利用されていましたが、施設外の設置や足場の問題で介護を必要とする方々の困難さも残っていました。
避難者の概要は、らくゆう館は地域交流館の集合体で、136名が、久喜宮小学校体育館には、68名が共同生活をされていました。訪問した日が平日の昼間であったため、仕事へ行かれた方や自宅の片づけで不在の方々も多く、避難所内には高齢者の方々が談笑され、乳児を抱えた女性や休校となった学童児や高校生の姿が目立ちました。生活や健康面を尋ねると、「何とか助けてもらいながら生活しています」「物資は足りています」「うちより被害の大きいところもあるけん、無理なことはいえない。」という言葉が返ってきました。先の見えない制限を受けながらの生活にも関わらず、前向きな姿勢のある一方で、疲労感もあり、精神的にはかなりの我慢を強いられている状況であることが伺えました。物資の面の供給や管理は早かったようですが、ライフラインの復旧の程度は地域差があり、避難所内の集団生活における公衆衛生活動の充足には至っていないこと、昼間の巡回保健師の訪問の時間には不在の方々も多く、避難者の健康面への配慮は充分には至っていないことが感じられました。特に人が多く集まる夜間においては、要支援者の把握や車中泊者への対応も充分でなく、生活不活発病やエコノミークラス症候群の発症リスク、熱中症や食中毒のリスク、粉じんによる呼吸器感染症のリスクは潜在している状況と判断しました。
以上の調査から初期アセスメントを行い、保健福祉との連携を視野に、被災された方々の健康の維持、早期看護介入による疾病の悪化防止を踏まえた支援活動が必要と感じています。
7月中旬の杷木町・避難所の様子
文責:クリティカルケア・災害看護領域 助教 清末定美