国際保健・看護Ⅱ ベトナム研修を終えて

私たち3年生5名は2017年8月1日から8日の7日間、国際保健・看護Ⅱの海外研修としてベトナム社会主義共和国を訪れました。今年は去年に引き続き、「災害から命と健康を守る」というテーマの中で、特に高齢者の災害時の対応に重点をおいて研修を行いました。研修では、ナムディン看護大学、ナンヴァン村ヘルスセンター、ベトナム赤十字社、ドンアン診療所を訪問しました。

ナムディン看護大学では、災害時の対応についての講義を受けた後、「もし昨年の台風で生じた洪水のような災害が起きた場合、逃げてきた地域の人々をどこに避難させるか」という議題に対して日越混合の2グループに分かれてディスカッションを行い、その後、学内を探索しました。学内は現在工事中の箇所が多く、避難場所・経路を決定することに苦労しました。グループワークの成果発表では、どのグループも避難場所は同じでしたが、避難経路の誘導方法や必要な援助を行うチーム(食糧調達や要配慮者の支援など)の必要性など様々な意見が出ました。また今回のテーマである、高齢者の災害時の対応について考えるために、高齢者の身体的・精神的・社会的変化やそのメカニズムをグループで話し合い、耳栓やサスペンダーなどを用いて高齢者体験用のキットを作成し、ベトナムの学生に着用してもらいました。キットを着用した状態で学内を散策し、改めて災害時にどのような支援が高齢者に必要かを学ぶことが出来ました。ディスカッションは英語を中心に行いましたが、当初はベトナムの学生の輪に入ることが難しく、有意義なディスカッションを行うことが出来ませんでしたが、毎日の反省を生かし、積極的に話し合いに参加したり、ボディランゲージを駆使したりして徐々に対等な話し合いが出来るようになりました。交流会ではお互いの伝統衣装を交換したり、日本の伝統的な遊び(射的や輪投げ)をベトナムの学生に体験してもらったりなど、大変楽しい時間を過ごしました。

ナンヴァン村ヘルスセンターでは、昨年と同様にベトナムのコミュンレベル(第一次医療)の医療施設を見学し、健康教室を実施しました。ヘルスセンターは11地区を統括し、ボランティアからの情報をもとに独自で統計データを収集し、診療活動・健康診断、予防接種、伝統医療(漢方)の提供などを行っています。健康教室では昨年に引き続き多くの高齢者の方に参加していただくことが出来ました。

新たな試みとして、ナンヴァン村に暮らす高齢者(100歳と95歳)のご自宅を訪問させていただきました。どちらの方も食事や運動に気をつけた生活をされていました。また日本との違いは、徒歩圏内に子どもや孫が暮らし家族全員で高齢者の生活を支援していくというものでした。そんな健康的なお二人に長寿の秘訣を伺うと、毎日欠かさず運動を行うこと、食事は自分の畑で採れた野菜と自分で釣った魚を食べること、自分の仕事や家族と過ごすことを自分の楽しみとし生きる喜びにつなげることであるとおっしゃっていました。日々の運動や食習慣が健康的な老後を過ごすポイントになることが分かり、改めて自分の生活習慣を見直す必要があると痛感しました。

ベトナム赤十字社では、赤十字社の構成や現在行っている活動内容を伺いました。特に災害対策事業として一昨年まで日本赤十字社も支援していたマングローブの植林事業は、今後政府とともに継続していくという報告を受けました。またマングローブだけではなく、災害の種類に応じて人々が使用できる避難所を建設していることも知りました。午後は、ベトナム赤十字社の傘下であるドンアン診療所を見学しました。この診療所もナンヴァン村ヘルスセンターと同じくコミュンレベルの医療施設ですが、近代的な医療設備を整備し、人々の自立を支援するための診療提供や生活支援を行っていることがわかりました。
今回の研修を通して、ベトナムの社会背景や文化、医療の現状はもちろんのこと、高齢者に対する医療サービスや家族での支援、高齢者自身の健康意識の高さを学び、改めて日本の社会情勢や医療・看護について自分たちに不足している知識が多くあることがわかりました。また、ベトナムの学生との交流から積極的に自分の意見を発信していくことの必要性も実感しました。この学びや自己の課題をもとに今後の学習や実習をより良いものにしていきたいと思いました。

2017.08.31①ベトナム研修
ナムディン看護大学で開催された日本祭りでアオザイと浴衣の衣装交換
2017.08.31②ベトナム研修
ナムディン看護大学の学生と被災者受け入れの適切な場所などを検討している様子
2017.08.31③ベトナム研修
ナンヴァン村ヘルスセンターでの健康教室の様子

学部3年 岡野 佑茄子