フィリピンより第2報をお届けします。今回は、私が実際に携わっている事業に関してご紹介します。
日本赤十字社は台風ハイエンによる被害に対して災害直後から医療スタッフを派遣するなどの支援を行っています。現在はフィリピン中部台風復興支援事業(以下、本事業)として、長期的な活動を展開しています。本事業の概要は、台風により破壊された住居の改修(Shelter)、生活再建に必要な資金の提供(Livelihood)、ヘルスセンターの医療資材の整備(Health)、地域と学校を中心とした災害に強い組織作りと衛生施設の整備、防災・衛生教育(Disaster Risk Reduction / Water, Sanitation and Hygiene)を行うというものです。私は今回、小中学校で展開する事業(支援対象校9校)のサポート要員として、既に活動を行っている2名の日本赤十字社の要員に合流するかたちで配置されました。
任地に到着してからは早速、学校のトイレ・手洗い場の改修工事のための調査が始まりました。フィリピンの小学校の中には各教室の中に1つずつトイレが設置されている学校があります。なので、トイレに問題が生じると、悪臭が漏れる教室で授業を受けなければなりません。また台風ハイエンから1年が経過していますので、他の団体が既に給水システムの支援を終えている学校もありました。しかし、ソーラーシステムで稼働する給水システムを提供された学校は、このシステムを使い始めて2日後には既に使用できなくなったと放置されていました。どんなに立派な施設を整備しても、使われ続けなければ意味がありません。相手のニーズと持続発展性を考慮すると、実はいたってシンプルで少し時代遅れと思われる施設が最良の選択である場合もあることを実感しました。
またハード面を整備しても、それを使う人たちに保健衛生上の問題がある場合があります。例えば、この調査の最中にも、教室の中にトイレがあるのに、校庭の片隅で用を足している子どもがいました。また学校によっては、トイレの機能自体に問題はないものの、掃除が行き届いておらず不衛生な環境がみられました。本事業はこのようなソフトの問題に対して、日本で言う青少年赤十字を組織化し、高校生を中心としたメンバーによるピアエデュケーションを行う体制作りも進めています。ここで大切なことは、このような保健教育を行う主体となるのはその地域に住む若者である点です。開発協力において地域に根付いた住民主体の活動の重要性はよく謳われますが、それをどう具現化するかがより重要であることを、本事業を通して学びながら日々の業務にあたっています。
最後に、写真のように学校によっては台風ハイエンによるダメージが大きく仮設のテントで授業を行っている学校もあります。しかし、どの学校もそのたたずまいとはうらはらに、教室には子どもたちの元気な声と人なつっこい笑顔であふれています。