大学院研究生として取り組んで

私は平成25年1月から9ヶ月間、本学の研究生として学ばせていただきました。
その目的は、10年前の修士課程在籍中に実施した研究を再分析し社会に発表することでした。実施した研究とは、術後の患者を対象として看護における察しの様相とその意味を明らかにした質的研究です。
研究が未発表であることについて、協力をいただいた患者さんに申し訳ない気持ちが募っていたところ、本学の研究生制度を知る機会があり「発表するにはこの道しかない」と出願を決心しました。

研究生としての生活は、月に1~2度ほど大分から本学へ通い、指導担当の先生に面接下でご教授いただきながら、仕事と育児との合間を縫って研究に向き合う日々でした。
面接指導の間はメールでのご指導を頂きました。その日々をすごすうえで「研究は子どもが寝静まったときしかできない」という時間的な制約と研究発表の場を早期に決めたことが原動力となり、予想以上に総力的に取り組むことができました。

研究発表の場については、研究実施から10年経過したこともあり自分では判断できずにいたところ、指導担当の先生が「本学紀要の原著を目指してはどうか」と提案して下さいました。
原著という言葉に一瞬尻込みしましたが、協力を得た患者さんのためにやるべきではないかと思い覚悟を決めました。

研究指導が開始されてからは研究テーマである「察し」の定義化など、研究としての全般的な明確さや一貫性の無さに対し指摘を受けては再考することの連続でした。それは質的研究に対する自己の理解不足を痛感しつつも、これまで気づけなかったことへの学びが深まっていることを実感できる過程でもありました。だから与えられた課題にはきちんと取り組む努力をし続けることができました。
なかでも大きな手ごたえを感じたのは結果の再分析で得た内容です。例えば、以前は「苦痛」としていたカテゴリは「自分ではどうにもできないほどの術後の身体のきつさ」と表現を変えました。このように今回の再分析によって、患者さんが感じたリアリティやニュアンスを損なわない生き生きとした結果が得られたと思っています。
そこに辿り着けたのは、客観的でかつ鋭い視点をもって私の研究に向き合いながら、温かい励ましを常に送りつづけて下さった指導担当の先生のお陰です。

論文投稿にあたり2名の先生の査読を受けました。そこでは研究方法の妥当性や考察が浅いこと等、さまざまな指摘を受けました。
その指摘の背後に研究や論文として繊細さに欠ける部分を見出し、原著に導こうとする先生方の思いをひしひしと感じとりました。指摘されたことをひとつひとつ取り組むごとに研究や論文が洗練されていくことを目の当たりにし、研究ってこんな風に良くなりながら形になっていくものなのだと初めて思うことができました。
同時に、実施した研究を社会に発表する機会を与え、きちんとした指導をして下さった先生方や本学の研究生制度に対し感謝せずにはいられませんでした。
そして今回再考した研究が本学紀要の原著論文として採用されることになり強い達成感を得ました。その達成感は今、いろいろなことに対する私の価値観を変化させています。
今回の経験で得た気付きや学びを今後の目標に生かす姿勢を持ち続けていきたいと思っています。

平成24年度入学 大学院研究生 大石 みゆき