【1年生の岩波新書感想文】 『色彩の心理学』


著者情報等金子隆芳著、岩波書店、1990.
寄稿者名1年生 津曲 宏美(2012年6月)
本学所蔵なし
この本を読んで、色の持つ力やその力を発見するまでの研究などについてよく分かった。私がこの本を読もうと思ったのは、心理学に興味があったからである。特に、色彩による心理は不思議である。暖色を見ると何だか暖かく感じる。また、青などの色を見ると心が落ち着く。なぜ、このようになるのか疑問を持っていたところ、この本を見つけ、読んでみた。
 こうした色彩の現象が心の働きによるということは、ゲーテの記した色彩論にあった。ゲーテは研究によって発見したことを箇条書きにして残している。黒い色は縮小して見え、白い色は膨張して見えることなどは、今ではだれもが知っているようなことである。しかし、これはゲーテの研究によって明らかにされたものだった。昔は、現代のように技術も進んでおらず、地道な努力の成果であった。ゲーテの才能は科学においても多岐にわたった。そんな中、ゲーテが色彩論の研究する動機となったのは、絵画にあった。ゲーテは「もし人が美術に関する色彩を幾分なりとも攻略しようとするならば、まず、物理的現象としての色彩に迫らなければならない」と考え、まずは色彩の諸現象を自分の目でみようと決心した。さらに、ゲーテの本格的な色彩研究が始まったのは、41歳のときだった。私は、41歳から研究を始めたゲーテをすごいと思った。興味があれば研究を始める年齢は関係ないのだと実感した。また、自分の疑問を自分の研究によって解き明かすという行動力を尊敬した。
 色にはそれぞれの持っている力がある。暖色と寒色は日常の服飾用語でもあって、赤系統が暖色で、青系統が寒色であることは誰でも知っている。大昔から人類は物を燃やして暖をとってきたが、物を燃やせば火は赤く燃える。また、太陽の熱エネルギーは赤い。このようなところから赤を暖かく感じる。また、色の好き嫌いにもその人の性格が出ると言われている。この本によるとオレンジ色のような派手な原色の好きな人は自信欠乏の「しりごみ屋」であり、原色の嫌いな人は世渡りのうまい「自信家」だそうである。身近にいる人を当てはめてみると、ぴったりであったのに驚いた。色彩と心理は密接に関わっている。
 私は、これからは部屋の小物は明るい色で、机のまわりには青などの落ち着いた色をまとめるなど、自分の身の回りのものの色を考えようと思う。身の回りのものの色を少し変えるだけで気分がリフレッシュでき、作業の効率が上がる。昔の人の研究のおかげで現在のカラー・セラピーなどが生まれた。昔の人は本当にすごいと感じた。私も、疑問を持ったら、その疑問を徹底的に追及し、納得してから次へ進もうと思う。また、これからもさまざまなジャンルの本を読み、理解を深めていくことが将来の自分にとっても重要なことだと実感した。




****************************************************
      喜多学長が、新入生に課題として出された「岩波新書の感想文」を
                シリーズで掲載しています。
****************************************************