【1年生の岩波新書感想文】 『本は、これから』


著者情報等池澤夏樹編、岩波書店、2010.
寄稿者名1年生 松田 千里(2012年6月)
本学所蔵なし
私は、図書館で何を読もうかと迷っていた。そんなとき、この「本は、これから」を見つけた。本を読むならこの本を、と言われているようで私はすぐにその本を手に取ったのである。
 本書は、37人の出版関係者の方々が本について自分の考えを6、7ページ程で短く書いたものを一冊にまとめたものである。37人の中には、本をあまり読まない人でも知っている名前があるだろう。そんなにたくさんは本を読んでいない私でさえ知っている人が何人かいて、親近感が湧いてきた。
内容の多くは、話題の電子書籍と紙の本についてである。人それぞれ考えがあり、答えもそれぞれ違う。初めは、異なる意見を聞くということに多少不安があった。しかし結果的には、私に多くのことを考えさせてくれ、より自分の意見を鮮明にさせてくれた。ここで、私が感銘を受けた話を2つ紹介する。
 1つ目は、内田樹さんの「活字中毒者は電子書籍で本を読むか?」である。彼は、紙の本には宿命的な出会いがあるという。紙の本には偶然があるからこそ、人間として必要な何かを手に入れられるそうだ。これを読んだとき、今回私がこの本を手に取ったことも宿命的な出会いだったのではないかと思った。電子書籍だと読みたい本をすぐに見ることはできるが、こういった出会いはできないだろう。ここに紙の本のよさがあると思う。
 2つ目は、柴野京子さんの「誰もすべての本を知らない」である。電子書籍は多くの書籍を構え、検索技術も高度なものになっている。このままいくと、もはや世界中のほんはすべて手に入り、誰もが好きなものを自由に選べるようになると言っても過言ではない。こんな夢のような話が現実に起きつつあるのだが、彼女はこれに対してこんな意見を述べている。学者ならともかく、普通の生活を送っている人がすべての本の中から最適な本を選ばなければならないのか。手の届く範囲で納得できる何冊かの本に出会えれば、人は幸福に生きていくことができるはずだ。これを読んで、私の周りの本屋や図書館にも多くの本があることに気付かされた。これだけ本があれば、私にとって大切な本も見つけることができるはずである。今回のように、自然と引き寄せられるような本との出会いを求め、本を探すために出かけたいと思った。
 この本には、著者の方々の本への思いが詰まっていた。皆、本が好きなことがすぐに分かる。本があまり好きではない人も、本を好きになるきっかけをつくってくれる1冊となるのではないかと思う。本がこれからどうなっていくのかを、じっくり考えてみたい人にもお勧めしたい。私の、本に対しての考えも少し変わった。本はただ読むものというだけでなく、出会いがあり、幸せを与えてくれ、人と似ているものだと思えた。だから、これからの本との出会いを、1つ1つ大切にしていきたいと思う。


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    喜多学長が、新入生に課題として出された「岩波新書の感想文」を
    シリーズで掲載しています。
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