【1年生の岩波新書感想文】 『ルポ高齢者医療』
著者情報等 | 佐藤幹夫著、岩波書店、2009. |
寄稿者名 | 1年生 大楠 莉加(2012年6月) |
本学所蔵 | なし |
本を読んで分かったことは、高齢社会とは高齢者が増えると人口の再生産が行われなくなることであり、高齢社会だけでなく、少子化も起こり人口減少の問題にもなるということです。労働の減少にもなり、産業構造の変化にどう対応するのかも問題になるそうです。また、それまでの高齢者医療に欠けていたものは、お年寄りの生活を見てこなかったことで、見てきたのは病気だけだったことだそうです。高齢者医療は治すことを目的とした一般医療とは異なっていて、高齢者にとって健康とは何か、高齢者に対する医療とは何か、生活を犠牲にしてまで抱えている疾患を治療しなければならないのか、一般医療とは目的が違うと筆者はいっています。確かに、年を取ってきて病気になるのは当たり前で、その病気は悪くなることはあっても、多くはもう治らないし、よくならないから、完治させることが高齢者医療ではないと私も思いました。
もう一つ筆者が主張したいことは、この今の日本の高齢化社会をどうするかということでした。アメリカ型の競争原理や自己責任といった「個」を単位とする価値観につくり変えることで、高齢化社会を防げるということです。日本は誰もが医療を受けることができるように仕事をしている人から税金という形でお金をとり、医療費にまわしているのに対して、アメリカはお金を持った人しか医療を受けることができません。こうした自己責任を重視する価値観だから、アメリカは高齢化も少子化も防ぐことができていると感じました。日本においても、「小泉改革」は、そのような改革だったと明らかになっているそうです。「国に言われる通りにやればやるほど、食えなくなっていく」と国民が言うほど今の日本の政治は劣っています。私は筆者の主張に対して、アメリカのやり方でやっていくと、確かに、高齢化も少子化も克服できるかもしれませんが、急に「皆が医療を受けることが出来ない」と言われても「死ね」と言われているようで納得できないだろうし、私も将来医療を提供できない看護職にはなりたくないなと感じています。これから、国民が納得できるような対策が出来るかが今後の課題だと思いました。
私が今まで知らなかったことを理解することができ、また自分が考えもしなかった筆者の意見などを読んで考えさせられました。本を読むことは国語力を高めるだけではなく、知識を増やすこともできると思います。これから、もっと本を読み、紹介できるくらい良い本に出会っていきたいと思いました。
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喜多学長が、新入生に課題として出された「岩波新書の感想文」を
シリーズで掲載しています。
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