『Dewey the Library Cat : A True Story』


著者情報等Vicki Myron with Bret Witter,Little,Brown,2011.
寄稿者名教授 因 京子(2014年1月)
本学所蔵なし
Dewey the Library Catは、2013年後期の「英語Ⅱ」の因京子担当クラスの読解課題です。実は、本書は、Dewey’s Nine Lives という全米でベストセラーとなった本を年少の読者向けに翻案したもので、著者の人生についてのエピソードが大幅に省かれ、図書館に住んでいた猫のDeweyと人々とのかかわりが主に描かれています。英語の表現は易しくなっているとはいうものの、214ページもの長さのある本なのですが、チナミクラスの総勢28人は、これを読み通し(その筈ですよね、みんな?)、分担して翻訳に挑戦しました。結果は、新学期までには冊子にまとめ、図書館で皆さんに読んでいただけるようにする予定です。もちろん原書も図書館に備えられていますので、ぜひお読みください。Dewey’s Nine Livesをお読みになりたい方は、因がお貸しします。
  では、何人かの学生による、本書の解説をお読みください。英文によるものは全文を紹介していますが、日本語のものは一部を抜粋しています。 


  1年生 岩本 実華 Mika IWAMOTO with K.CHINAMI

 Do you have a cat? If you don’t, you will probably want to have one if you read this book. If you have a cat, this book makes you want to hug your cat close to your bosom.
 One bitingly cold morning in Iowa, Vicki Myron, the director of Public Library in Spencer, a small town in Iowa, found a kitten in the book return box. The kitten named Dewey became a Library cat who was loved by all the generations of people in Spencer, and later became the most famous and popular cat throughout the world. No wonder: he was not only an extremely lovely-looking cat, but also a very talented actor. His performance was superb. If a baby girl wanted to rub his hair the wrong way, he let her do that gladly, because he knew that she was enjoying being with him, and being at the library. If visitors wanted to take a picture of him, every time he looked into the camera and made a right face and pose as if smiling. Even when he was tired, he never failed the visitors’ expectations.
 Dewey was a genius in healing people. When somebody was crestfallen, he snuggled up on that person’s laps so that he or she could feel the warmth of his body. When somebody was grieved over a loss of a loved one, he just stayed with the griever for a couple of hours. Dewey would always understand a tiny voice inside people’s heart. The story of Dewey reminds us of the power of simple love.
 The story of Vicki’s life is another appeal of this book. She had to go through many physical and psychological troubles. She tells us how she struggled with them, helped by the people around her. But there were times when she felt the weights are too heavy on her and she could go on no further. In those moments, there was somebody who helped her out by just staying beside her: Dewey.
 When you feel depressed, who will be there to help you? Your friends, or, your family members, maybe? When they feel depressed, what can you do for them? And, what can you do when you see an unknown person deep in sadness? Can you do anything? Dewey consoled not only his friends, but anybody in need. As a nursing student, I very much like to acquire the power of love he had. I want to be a nurse who can be a consolation to people, just like Dewey.
 After you read this book, you will surely love your daily life and people around you all the more. Why not read this book and meet Dewey?

1年生 高田 有里

 この本の読みどころは、デューイと図書館職員たちとの愉快な攻防戦が繰り広げられる第8章である。デューイは輪ゴムが好きで好きで、飲み込んでしまうため、職員たちは輪ゴムを必死で隠してしまおうとした。しかし、完璧に隠したと思っていても、デューイはどこからか見つけ出してしまう。この、猫と人間との知恵比べは、後で思い出しても笑いがこみあげてくる。
 デューイは心の優しい猫であった。彼は、著者のヴィッキーや職員、地域の子供たちや大人たち、デューイに会いに遠路やってくる人々に対して、まるで人間の心を読み言葉を理解しているかのように、彼らが望んでいる通りの行動を取った。たとえば、テキサスからはるばるやってきた6歳の少女は、デューイが喜んでくれると期待してネズミのおもちゃを持ってきていた。図書館長のヴィッキーは、デューイがそんなおもちゃには関心がないとわかっていたので心配したが、なんとデューイは、その女の子が帰るまで、そのネズミにじゃれかかり、飛び回り、はしゃいで見せたのである。彼女が帰った後は、二度とそのネズミには関心を示さなかったそうだが。このように、デューイは、愛くるしく賢い猫であったが、何より素晴らしいのは、人を喜ばせることに喜びを見出すことのできる猫であったことだ。

2年生 赤木 花衣

 私がこの本を読んで印象に残ったのは、Deweyという猫によって広がっていく、人と人との輪である。普段私たちは公立図書館で、本を借りるときにスタッフと事務的な言葉を交わすだけであるが、この本の中では、みんながDeweyと会いに町の図書館に来て、そこで出会う人たちや図書館のスタッフと話をするのである。Deweyは多くの人に愛され、図書館だけでなくスペンサーという町全体を変えていく。もし、図書館の返却ボックスの中に子猫が捨てられていなかったら、そして、もし、その子猫が見捨てられていたら、この物語は始まっていなかった。人は、時には重要な選択を迫られ、決断をしなければならない。もしかしたら、子猫を返却ボックスに置いていった人には何か事情があり、図書館の誰かが助けてくれるのではないかと願って子猫をそこに置いていくという、ぎりぎりの決断をしたのかもしれない。

1年生 鹿子島 惇

 この本に描かれているのは、楽しいことばかりではない。盛者必衰という言葉もあるが、スペンサーの町の人々だけではなく世界中の人々の心を鷲掴みにしたデューイにも老いが訪れ、晩年は、図書館理事会が引退勧告決議、つまり、もう図書館にはデューイを置くなという決定をする寸前までいく。また、最後には、腹部にできた癌のために苦しみ、ヴィッキーは安楽死を選択する。私は、自分がヴィッキーであったら、自分のために少しでもデューイを長く生きさせようと延命治療をするか、彼を痛みから解放するために安楽死を決意するか、どちらを選択するだろうか、できるだろうか…と考えさせられた。

1年生 梶栗 千裕

 公共の施設で動物を飼うことは、動物アレルギーの人や動物が苦手な人たちがその施設を利用する機会を減らしてしまうかもしれない。この本にも、デューイが図書館にいると猫アレルギーの子供が図書館に行けなくなってしまうという苦情が出たと書かれていた。公共の施設は、皆が平等に利用できるようにしなければならない。しかし、動物が人に与える影響は大きい。この本を読むとそれがよくわかる。デューイのいた図書館では、医師にもアドバイスを求めて、アレルギーの子が来たときには猫の影響が及ばないような策を講じ、共存を図った。このことは、常識にとらわれず、今の常識よりもさらに良い状態を実現するにはどうしたらよいのか考え、やってみることも大切だということを、私に教えてくれた。