『NICUのちいさないのち:新生児集中治療室からのフォトメッセージ』


著者情報等 宮崎雅子,ネオネイタルケア編集室,メディカ出版,2011.
寄稿者名助手 田中 時穂(2014年5月)
本学所蔵なし
 私のおすすめの1冊は、『NICUのちいさないのち』という写真集です。NICUとは、「新生児集中治療室」のことです。この写真集は、写真家の宮崎雅子氏が撮影し、新生児医療と看護の専門誌『ネオネイタルケア(Neonatal Care)』に掲載された写真をまとめたものです。
 NICU(新生児集中治療室)には出産予定日よりもずっと早く産まれた赤ちゃんや低出生体重児として産まれた赤ちゃん、産まれながら体に病気を持った赤ちゃんなど、出生直後から医療の助けが必要な赤ちゃんが入院します。日本の新生児医療は世界でも最先端と言われており、早い時期に小さな体で産まれても諸外国に比べて高い確率で生き延びることができます。小さな体で生きようとする赤ちゃんを支えるのは、技術だけではありません。それにもまして、そうした赤ちゃんを思いやる家族や医療者の力が重要なのです。
 この写真集には、赤ちゃんの輝く命の姿が溢れています。治療を受ける赤ちゃんは、小さいながらも様々な顔を見せてくれます。必死に生きようとする気持ちの表れなのか実に真剣な表情、家族の腕の中で安心しきった表情、ミルクを飲んだあとの満ち足りた表情、そして、笑顔。小さくても、一人として同じ子はいません。十人十色、それぞれの個性を持ち、どの子も、とても愛らしい。
 赤ちゃんを支える家族や医療者のまなざしもこの写真集には写し取られています。産まれたばかりの子どもがNICUに入院することを不安に思う家族は少なくありません。子を思うからこそ、不安が募るのです。その家族の気持ちを受け止めながら、強い決意を以て新生児医療を支えていく医療者の心のうちも、この写真集からは伝わってきます。
 誰しも皆、赤ちゃんの時代があり、家族をはじめ周りの人の支えを受けながら生きてきました。それは、看護師として出会う多くの命すべてに当てはまることです。力強い命の輝きと、人や家族の原点を感じさせてくれるこの写真集を、ぜひ、看護を学ぶみなさんをはじめ多くの人に見ていただきたいと思います。