『現代の貧困: ワーキングプア/ホームレス/生活保護』
著者情報等 | 岩田正美著、筑摩書房、2007. |
寄稿者名 | 1年生 千布 さとみ(2008年12月) |
本学所蔵 | http://opac.jrckicn.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=29981 |
私は最近読んだ岩田正美著の『現代の貧困』,筑摩書房(2007)という新書を紹介します。はじめに、私は貧困とは何かを考えました。新明解国語辞典によると、貧困とは「貧乏(経済的にゆとりがなく衣食住のすべてにおいて見劣りすること)で生活が苦しいこと」とのことです。この貧困という言葉からは、真っ先に発展途上国における児童労働や水や食糧の不足、伝染病などを思い浮かべます。先進国の中でも社会保障制度が整っている日本にも貧困があるのだと考えることはできません。
しかし日本でも働く意欲がある、または働いている人がホームレスになったり、生活保護が受けられず餓死するといった事件が何件もあったりと、貧困が起きています。
なぜ、発展途上国でもない日本で起きている貧困が改善されないのか疑問に思いました。この本ではホームレスの人のことを主に書いています。本書から一旦貧困に陥ると社会から排除され、結局はホームレスから抜け出せなくなっていくということが分かります。著者は「路上生活をするホームレスの人を見て、ほとんどの人がおかしな人だと受け止めてしまい、別世界に住んでいる人だと認識している。これが社会的排除につながる。」と述べています。私もホームレスになるのは、その人の独自の考え、人生観があるからその道を選んだのだということを聞いたことがあります。でもこの解釈はすべての人に当てはめるのは間違っているということがこの本を読んで分かりました。社会的にこのような考えを持つことでホームレスの人は住所登録もできず、居場所を失っていき、正規雇用者になれず、生活保護をもらうこともできません。つまり社会的排除を受けた人たちは貧困から抜け出す手段が断たれ、一生貧困から抜け出せないのです。
これを読んで私はこのようにしたのは貧しい人を異次元の人、別世界の人だと見なし、見て見ぬふりをする多数者のせいなのだと思いました。このため、社会から疎外されたと感じ、刑務所は居心地がいいと思い犯罪を起こす人がいたり、人生に失望したといって無差別殺人を起こしたりする人がいて、様々な重大な事件が多発するのです。
この本によって貧困は自殺、殺人事件など様々な社会問題を引き起こしている原因の一つであるということがよく分かりました。日本は先進国で、物がありふれている豊かな国だから貧困はなくなったと多くの人は思っていますが、日本にもまだ貧困が存在しているのです。私たちは、この貧困という現実を直視し、対策を考えなければならないと思いました。今私にできることは、社会に目を向けるということです。これから大学で、まだ自分が見えていない社会を幅広い視点から見ることができるように学んでいきたいと思いました。
これからの日本を背負っていく、若い世代の人にこそぜひ読んでほしい一冊です。