『武器としての決断思考』
著者情報等 | 瀧本哲史著、星海社、2011. |
寄稿者名 | 教授 増田 公香(2011年12月) |
本学所蔵 | http://opac.jrckicn.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=37241 |
しかしながら私があえてこの本を本学の看護を学ぶ学生に読んでもらいたいと考えたのは、本書において著者が「知識ではなく考え方を学ぶ」ことを強調し、また「考え方」の方法論を具体的に提示している点にその理由がある。それは、研究方法などといった学際的なものではない。看護の専門外である私が言明するのは問題があるかもしれないが、看護において技術を中心とした知識は大変重要であると考える。しかしながら、知識だけでは何の意味もなさないと思う。本書では、実学には「知識・判断・行動」という3段階が存在するとした上で、人間が生きていくうえで遭遇する事象について、自ら考えることにより「自分の力で幸せになる」方法論を解いている。
本書を読んで私が本書を通して学びかつ強調したい点は、次の3点である。
第一に、「漠然とした問題を「具体的に」考える」ということである。たとえば「結婚はいつしたらいいのか」ではなく具体的に問題の争点にしぼり考えていく、ということである。第二に、「メリットとデメリット」の条件を各々3条件に分析する視点の提示である。従来私はメリット・デメリットというと感覚的に分類してきたが、本書でその視点を学ぶことができた。第三に、著者は、大学受験までの考え方を捨てる、としたうえ「大学以降の人生では、情報に接したら、それが本当かどうかをまず疑ってください。」とし、「本にこう書いてあるけれど、偉い人がああいっているけれど、それは本当なのか?」と考えてほしい、としている。私も今から20数年以上前、大学入学時大学の教員から同様のことを言われ、現在に至るまで私の基盤となっている。
また個人的なことで恐縮だが、今から十数年前アメリカで勉強した際、企業派遣でビジネススクールに多くの日本人留学生が来ており、週末は手作りの日本食を食べながら議論を戦わせた。それは私が学んだ社会福祉の大学院では得られないロジカルな(論理的な)議論の連続であった。本書は当時の議論方法を思い出させられた。
本書は、授業形式にまとめられ、難解なタイトルとは異なり非常に読みやすい。是非冬休み中に読み終えて欲しい本である。