『援助じゃアフリカは発展しない』


著者情報等(原題 Dead Aid : Why Aid is Not Working and How There is Another Way for Africa).ダンビサ・モヨ著、小浜裕久監訳、東洋経済新報社、2010.
寄稿者名助手 堀井 聡子(2011年5月)
本学所蔵http://opac.jrckicn.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=36421
アフリカでは2人に1人が1日1ドル以下で生活をしている。この事実を前に、とりわけミレニアム開発目標の採択以降、国際社会は対アフリカ援助を急速に促進してきた。日本もその例外になく、ODA全体に占めるアフリカ支援の割合は確実に増大している。

 こうした、援助こそがアフリカの貧困削減に対する世界の責務とでもいうべき現在の国際社会の潮流は、欧米のエコノミストたちによって作り上げられてきたといってよい。それに対し、アフリカ出身のエコノミストである著者は、本書のなかで、援助依存を断ち切ることこそがアフリカの貧困削減の鍵であると訴える。

 本書は2つのパートから構成されており、第1部では、援助がいかにアフリカの腐敗を助長させ、アフリカを貧困に陥れてきたのか、翻って、援助は貧困削減に効果はなく、逆に経済発展を妨げてきたかを、さまざまなデータをもとに解説している。続く第2部では、援助以外の資金調達方法を用いることによるアフリカの経済発展の可能性について、幾つかの具体案をもとに提言している。なかでも、今日のアフリカにおいて急速に存在感を増している中国による支援に関する示唆は、アフリカ人エコノミストならではの視点が反映されており、興味深いものになっている。

 さて、本書は先進国の援助がアフリカの、ひいては世界の貧困削減の鍵とする「ビック・プッシュ論」を唱えた、ジェフリー・サックス著「貧困の終焉」へのアンサーブックともいえる内容となっている。この2冊を読み比べることは現在のアフリカを舞台とした開発の問題を考える上で役に立つ。ただし、読者は、どちらか一方の意見に迎合するのではなく、両者の主張を批判的に読み解いていくことが必要であろう。そのうえで、アフリカの貧困削減そして成長のために、国際社会があるいは個人レベルで何ができるかを考え、そのひとつひとつを行動に移していくことが必要ではないかと考える。