『後世への最大遺物』
著者情報等 | 内村鑑三著、便利堂、1897. ※現在青空文庫にて全文無料閲覧が可能 http://www.aozora.gr.jp/cards/000034/files/519_43561.html |
寄稿者名 | 教授 五十嵐 清(2013年6月) |
本学所蔵 | なし |
その時は、なぜもっと早くにこの本の意味を理解しなかったのか。本との出会いに感謝しつつ、高校時代の最初の出会いが悔やまれました。それから赤十字で働くようになってしばらくして、福岡市に本部を置くアフガニスタン支援のNGO、ペシャワール会の中村哲先生に出会い、中村先生のご本の中にこの本のことが書かれていたことに大いに驚きました。縁あって昨年から本学に勤務するようになり、今年から中村哲先生に本学の客員教授になっていただくことになりました。
いろいろな出会いを秘めたこの本の名前は「後世への最大遺物」(内村鑑三著)です。
内容は、明治27年(1894年)にYMCAの夏の箱根研修で内村鑑三が若者に向けて講演したものです。現代風にわかりやすく少し言葉を変えていますが、内村鑑三の次の言葉をみなさんに贈り、私の推薦図書とします。ぜひ、この本を読んでみてください。それがみなさんにとってよい出会いでありますように。
「私たちの生かされたこの世界に、何かお礼を置いて逝きたいというのは清らかな欲望である。さて、何を遺すか。まず、金(カネ)がある。お金を卑しんではいけない。金によって善い事業を起こせる。諸君、金を作るべし。
そこである人には金は作れないが事業を遺すことができる。農業を興し、日本を緑あふれる楽園とせよ。
だが、金も事業も才能に恵まれなければ、文筆をもって精神を遺せる。今できぬ戦いを未来に託せる。
では、金も、事業も、文筆もいずれの才にも恵まれぬ場合はどうしたらよいか。ここに誰にもできて、ほかの誰にもまねのできぬ最大の遺物がある。
それは諸君の生き方そのものである。置かれた時と所で諸君の生きた軌跡が、人々の励ましや慰めとなることができる」