『僕たちは世界を変えることができない。: But, we wanna build a school in Cambodia』


著者情報等葉田甲太著、 小学館、2010.
寄稿者名4年生 大橋 愛美(2012年4月)
本学所蔵なし
チョムリアップスオ(こんにちは)。
 今回わたしが紹介する本は、『僕たちは世界を変えることができない。But,we wanna build a school in Cambodia.』という本です。昨年、映画化された本なので映画を見た方もいらっしゃるかも知れませんね。
 本書は、なんとなく毎日を過ごしていた大学生がふと目にしたチラシから「150万円でカンボジアに小学校が建つ」ことを知るところから始まります。そして、仲間を集め試行錯誤を繰り返しながら、なんとかカンボジアに小学校を建てるに至ります。その間には、実際にカンボジアに出向き、エイズや地雷といったカンボジアの現実的な問題を目の当たりにします。
 今年の三月、私は本学の海外研修に参加しました。目的地はカンボジアです。私は、カンボジアに関する知識がなかったため、少しでもカンボジアに関係する本を読もうと思い本書を手にしました。本書の中で特に印象に残り考えさせられたことが次の二つです。
 一つ目は、エイズ病棟で出会った患者が著者に言った「今日は本当に楽しかった。ありがとう。それに写真を撮るとき、なんの抵抗もなく肩を抱いてくれて、すごくうれしかった。生きる希望がわきました」という言葉です。エイズに罹患した人は、疾患にだけではなく、周囲の知識の無さからくる偏見や差別からくる孤独にも苦しめられていたのかと思うとなんだかやるせなさを感じました。そして、決められた医療行為を淡々とこなすだけではなく、患者の話に耳を傾け、患者の気持ちに寄りそった看護を行うことの大切さを改めて考えさせられました。
 二つ目は、国際支援の在り方です。カンボジアには日本をはじめ様々な国や団体がカンボジアを支援しています。しかし、お金を与え、物を造るそれだけで本当によいのでしょうか。お金は使えば無くなり、物を使えばいつかは壊れます。国際支援をするうえでは与えたお金が何に使われているかを把握すること、また物を造ればそれを維持するための継続的な支援を行うことが大切だと感じました。そしていつかは、その国や地域の人たちだけで自立して事業を運営できるよう支援することが必要であると考えさせられました。
 本書は一章一章が細かく区切られており、とても読みやすい本です。カンボジアに興味のある方、なんとなく過ぎている毎日に退屈している方、是非一度本書を手にとって見てください。きっと、「何か」ドキドキすることを本書から感じることができるはずです。