『モリー先生との火曜日』


著者情報等 ミッチ・アルボム著,別宮貞徳訳,日本放送出版協会,1998.
寄稿者名1年生 柳田 さくら(2014年12月)
本学所蔵なし
 著者ミッチ・アルボムは、スポーツライターです。ある日、偶然に見たテレビ番組で、大学時代の恩師モリー先生が難病に指定されている「筋萎縮性側索硬化症(通称
ALS、Amyotrophic Lateral Sclerosis)」という神経の病と闘っていることを知ります。御存じのように、この病気にかかると、体の自由が次第に失われていき、やがて眼球や瞼の開閉がやっとといった状態になり、最後には死に至ります。ミッチは、モリー先生のもとへ駆けつけ、それから、病床の先生と今は大人になったミッチとの間で、毎週火曜日に授業が行われることになりました。病床で行われる先生の最後の授業には、教科書はありません。愛、死、お金、老い、家族、人生の意味など、数多くのテーマについて、モリー先生が優しく語り、ミッチはそれに耳を傾け、質問を発し、また考えます。この本は、この二人のやりとりを綴ったノンフィクション作品です。
 授業で扱われた主題はいずれも簡単には答の出ない問題で、難しく暗い内容なのではないかと敬遠してしまう人もあるかもしれませんが、この本は、語り口にも語られる内容にもモリー先生の優しく陽気な人柄が表れており、終始温かな雰囲気で話が進んでいきます。ですから、例えるならば祖父と孫が話すのを垣間見ているかのような気分で楽しくページを捲りつつ、重要な問題について考え始めるきっかけを得ることができます。
 この本の中で、特に私の印象に残ったモリー先生の言葉は、「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる」というものです。私はまだ19歳で、いかに死ぬかを考えるには少し早すぎるように感じます。それで、この言葉の意味も、はっきり分かっているとは言えません。しかし、自分が20代、30代、40代と年を重ねていく中で、何かに行き詰った時、ふとこの言葉が心に浮かんでくるのではないかという予感がします。この言葉を聞いて、今から、自分がいかに生きるかを一所懸命考えていけば、おのずと道筋が立っていくのではないかという気持ちが湧いてきました。
 この本に綴られているモリー先生の言葉は、どれも名言と呼べるような印象深いものばかりです。皆さんはこれまでの人生の中で恩師と呼べるような存在に出会ったことがあるでしょうか。皆さんがこの本を読み終えるころには、モリー先生が皆さんの恩師になっているかもしれません。図書館にも置いてあります。是非手に取ってみてください。