『あの空をおぼえてる』


著者情報等ケアリー・ジャネット・リー著、浅尾敦則訳、ポプラ社、2003.
寄稿者名1年生 添田 亜美(2013年2月)
本学所蔵なし
私は基礎力総合ゼミナールの授業で『あの空をおぼえてる』という本を読みました。物語の始まりは兄のウィルと妹のウェニーが買い物に出かけ、トラックに轢かれる事故に遭い、共に心肺停止に陥る場面から始まります。しかし、生命の危機的状況の中、兄のウィルだけが奇跡的に命を取り戻します。病院で目が覚めたウィルが目にしたのは、泣き崩れる両親の姿でした。ウィルは「どうしてウェニーだったんだ。」という父親からの一言を聞き、ウィルは自分だけ死から戻ってきた目的を探します。事故に遭った日を「生き返った日」と呼び、天国にいるウェニーに毎日手紙を書き続けます。この本はウェニーに宛てた手紙を1日目から154日目にわたり書かれたものです。その内容は、事故が起こって以来、笑わなくなった両親を笑顔にさせるためにはどうしたらいいのかという悩みや、自分が死んで妹が助かればよかったと両親は思っているのではないかという不安が書かれています。
この本を読んで私は、自分が死んでしまうことは辛いことだけれど、残された者はもっと辛い思いをすると思いました。ウィルの目線で母親と父親の行動や心情が書かれているのですが、娘を失って立ち直れない母親の精神状態や、2人だけで買い物に行かせた罪悪感に押しつぶされる父親の心の中が、鮮明にウィルに伝わっていると感じました。どんなに心の中の気持ちを隠しているつもりでも、ふとした瞬間に表れてしまい、自分が抑えられなくなる人間としての姿を読み取りました。母親、父親、兄、子どもである前に、まず人であると感じました。辛いことが起こったときは、すぐに自分の役割に戻ることが難しいと思いました。
家族の笑顔のために、自分のことは二の次にして懸命に頑張ったウィルの154日間の葛藤は、涙なしでは読めませんでした。ウェニーを失った兄、母親、父親それぞれの悲しみや、乗り越えるまでの辛さを細やかに感じとることができます。是非、読んでみて下さい。