開催日20100520
テーマラオスにおける看護助産人材育成強化プロジェクトの概要とその経験
講師元JICA ラオス看護助産人材育成強化プロジェクトリーダー 佐藤和美氏

ラオスにおける看護助産人材育成強化プロジェクトの概要とその経験

 

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第5回ランチョン・ミーティングを5月20日に開催しました。今回の講師、佐藤和美氏は、ラオス看護助産人材育成強化プロジェクトの最終段階の実施責任者です。佐藤氏は、看護助産の人材育成のシステムの確立を目標に、5年間にわたり、問題を整理し教育体制を改善・強化することに尽力されました。講演では、ラオスにどんな問題があったか、それに対して何を行ったかが写真や図版をまじえて解説されました。看護の面における国際協力の姿が具体的に示され、出席した学生の国際活動・国際協力への関心が大いに高められました。

ラオスで看護助産人材育成を進めるには、看護教育、看護サービス、行政マネージメントの3つの面全てにおいて、さまざまな課題を解決しなければなりませんでした。最大の問題は、看護教員の絶対数が不足しており、かつ、一定以上の水準が確保されていないことでした。看護教育に必要な機材が各国から提供されていても、その使い方や使用後の整備方法がわかる教員がいなくて、結局は使われないままになっているといったことも度々ありました。
看護サービスの質にばらつきがあったのは、ラオスには日本の国家試験にあたる制度がなかったためです。看護職の知識・技術の基準が統一されず、そのため、病院や施設によって提供される看護の質が一定ではありませんでした。看護職の労働条件の制度化も遅れていて、明確な勤務時間すら規定されていませんでした。

こうした状況を改善するためには、看護に関する意識改革が最大の要となります。そのために、行政面の改革を行うことと、ラオスの人々に主体的に看護教材を作成してもらうことの2点を中心に改革を進めていきました。行政面では、看護助産規則を制定し、看護学校の運営ガイドラインを作成しました。これによって、看護・助産、看護師・助産師などの基本的概念や看護業務の範囲などが初めて明確に規定されました。
教材作りでは、ラオス人の看護職者たちに基本看護技術19項目を選択してもらうことから始めました。基礎看護領域の内容が重視されたのは、入院中の患者の世話を家族が行うという根強い習慣があったため、看護職者には基礎看護技術の教育がほとんど行われていなかったからだそうです。この教材は、ラオス人看護職によってラオス人のために作成された初めて教材として、看護師、看護教員、臨床指導者対象の研修で大いに活用されているとのことです。

今回の講演を通して、参加した学生は日本の看護制度や看護技術がラオスでの看護教育の発展に大きく寄与していること、日々の学習が世界の看護を支える知識や手段となる可能性を秘めていることを知り、これからの学習への意欲が掻き立てられたことと思います。