開催日20100517
テーマヨルダンと日本における人口問題
講師ヨルダン王国高等人口審議会事務局長 アルクトブ ラエダ博士

ヨルダンと日本における人口問題

 

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5月17日、本学でのJICA平成22年度国別研修「ヨルダン南部女性の健康とエンパワメントの統合プロジェクト」研修員で来日中のヨルダン高等人口審議会事務局長アルクトブ・ラエダ氏(女性医師)を講師に迎えて、第3回ランチョン・ミーティングが開催されました。本年度最初の英語による講演です。

アルクトブ氏はリプロダクティブヘルスや女性の健康の専門家で、まず、日本とヨルダンの人口問題の今日的意味を異文化の観点から考察してくださいました。少子化、高齢化に悩む日本と、当面は人口抑制が課題となっているヨルダンの人口指標と統計が対比され、二つの国の異なる人口問題が浮き彫りにされました。

続いて、ヨルダンにおけるリプロダクティブヘルスの問題が、ヨルダンの社会的・文化的事情と密接に結びついていることが語られました。ヨルダンの女性たちは教育レベルが高いにも関わらず、ほとんど職に就いていないのだそうです。結婚して何人こどもを生むかが女性の地位や結婚生活の安定につながっているため、できるだけ多く子どもを産みたいと思っている女性が多いからです。
また、家族計画には性教育が必要ですが、それが十分に行われる環境ではありません。女性医療従事者の少ないヨルダンでは避妊具の副作用や性について医療従事者が相手であってもオープンに語ることのできない雰囲気があり、コンドームの使用率は低く、避妊具の使用を女性がコントロールすることが全くできないわけではありませんが、成功率は高い不妊手術は許されていません。そのため、実際に避妊具を使用し続ける女性はまだ極めて少ないのだそうです。

アルクトブ氏のお話は、看護は患者の文化・生活習慣・環境をよく知った上で行わなければならないという主張でしめくくられました。異なる文化や伝統、宗教を持った様々な国で保健医療分野の改善を図るには文化に配慮したアプローチが不可欠であることを改めて認識させられました。

略歴: Al-Qutob Raeda氏

1982年ヨルダン大学医学部卒。1985年米国ジョンズホプキンス大学修士、1988年同学博士。博士号取得後ヨルダン大学医学部家庭地域医学科准教授、2006年教授。同年から高等人口審議会事務局長。研究事項では、リプロダクティブヘルス、保健医療サービスの質、女性・家庭内暴力。戦略方針や対策の概要を作成し、プログラム及びプロジェクト開発に携わってこられた上、英語での業績も豊富。