開催日20100507
テーマペルー出身助産師の語る在日外国人への保健・医療
講師本学 准教授 エレーラ・ルルデス

ペルー出身助産師の語る在日外国人への保健・医療

 

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2010年度最初のランチョンミーティングとして、5月7日(金)に、本学准教授エレーラ・ルルデス氏の活動紹介が行われた。同准教授は、母国ペルーで助産師の資格を取得した後に来日、広島大学において保健学博士となり、大阪大学での勤務を経て、今年4月本学に着任した。
大学院生時代から今日まで、主に関西において在日外国人への保健医療支援活動に携わってきた。これまでの御自身の活動経験をもとに、国際活動とは海外での活動だけを指すのではなく、我々が日々暮らす身近な場所にも、国際的視点で考え解決していくべき問題があり、国際社会に貢献する機会があることを示して下さった。

そもそもエレーラ准教授が日本で保健学を学ぼうと決意したのは、第二次世界大戦後の日本が短期間に世界最長寿国となった実績に着目したからだという。ペルーには日本人移民も多く、日本に親しみを覚える機会があったことも背景的要素ではあるが、終戦直後、欧米諸国に比べ非常に短かった平均寿命を一挙に延ばした日本の保健政策を知りたいという気持が、来日を決心させた。

エレーラ准教授は、来日以後、自身の学習・研究の傍ら、国際協力機構(JICA)や非営利組織(NPO)を通じて、在日外国人向けのHIV相談や通訳ボランティアを行ってきた。日本人の南米諸国への移民が始まったのは明治時代で、現在はその子孫にあたる多くの日系人が南米諸国から出稼ぎ労働者として来日しており、彼らの存在は、日本の産業や社会の重要な一部となっている。
しかし、彼らの多くは、日本の年金・保険制度に加入できず、医療サービスを受けるには重い経済的負担が掛かる。また言語の障壁や外国人向け医療情報の不足のため、医療サービスへのアクセス自体が妨げられているという問題もある。
このような在日外国人の保健医療問題は、国内問題であると同時に国際問題でもあるとエレーラ准教授は指摘する。国際活動は海外でのことと考えられがちであるが、活動場所は国内にもあり、国際貢献を行う機会は我々の身近にもあるのである。

今回の報告および質疑応答を通じて、出席者は在日外国人の保健医療問題の存在に気づかされ、国際活動のあり方についての理解を深めることができただけでなく、母語のスペイン語はもとより英語にも堪能で、その上、成人してから学びはじめた日本語で詳細な資料を作成し、流暢に発表や質疑応答を行うエレーラ准教授の語学力、さらに、研究・語学研鑽の傍ら一貫して支援活動にも携わってきた姿勢に、深い感銘を受けた。
「国際」を大学名に掲げる本学に籍を置く学生と教職員にとって、今回のミーティングは、改めて心を引き締め、自らの決意を新たにする機会となった。