開催日20100701
テーマ「看護と検査」-臨床検査技師の立場から見た検査における看護(師)の役割‐
講師入江章子氏 元国立療養所近畿中央病院研究検査科技師長

「看護と検査」-臨床検査技師の立場から見た検査における看護(師)の役割‐

 

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7月1日、臨床検査技師で、大阪大学臨地教授でもあった入江章子氏(医学博士)を講師に、本年度第7回目ランチョンミーティングが開催されました。
入江氏は、PCR法(注)による結核菌検査の迅速化など、臨床検査の発展に多大な貢献をした方です。講演では、臨床検査の業務、検体検査の過程で発生しやすい医療過誤、検査値の読み方の3つに焦点を当て、安全で確実な検査と、よりよい治療と看護のために、看護師は検査について正しい知識を持ち、臨床検査技師とも協力することが重要であると話しました。

注)PCR(Polymerase Chain Reaction)とは、特定のDNA断片を短時間で増幅させる斬新な技術で、分子遺伝学や生理学の研究や、臨床医学の研究や日常の検査にも広く応用されています。

科学的なケアのためには、患者の状態を客観的に評価できる検査が必要ですが、多様化している検査を正しく行うためには、技師と看護師との連携が重要です。これまで、臨床検査技師の主要な業務は、血液・尿検査や細菌検査等のように検査室内で行うものが大半で、看護師などが技師の業務を目にする機会はほとんどありませんでしたが、近年、超音波検査や心電図検査等のような外来や病棟で行う業務が増加し、技師が患者と接する機会も増えてきました。
しかし、日常的に患者と接する機会の少ない技師が、検査を受ける患者の病状を充分に把握しておらず、しばしば検査上のトラブルに繋がることがあります。例えば、難聴の患者が技師の指示を聞き取れず、検査が出来ない場合がありますが、事前に、看護師からその患者が難聴であることを伝えられておれば、技師はその患者に、大きな声で話す、患者の耳の近くで話すといった適切な対応をとることで、検査を円滑に行うことができます。入江氏は、確実な検査の実施には、技師と看護師の協力は不可欠であると話されました。

一方、採血・採尿などの検体検査の過程で生じるミスの予防も、医療過誤の観点からも、正しい検査の運用からも、看護師の大切な役割のひとつです。看護師側の要因で生じる検体検査上のミスは、検査の指示受け、検体採取方法、検体の取り扱いの過程で生じます。
看護師は、検査の指示受けを確実にするために、医師とのコミュニケーションを緊密にすること、検体採取時には、患者の氏名、採取時間などの確認を怠らないこと、また、検体を採取した後の検体の取り扱い方法、例えば、保存温度の確認があります。看護師は確認手順の重要性を認識し、検体検査をめぐる医療過誤の防止に努めなければなりません。

さらに、迅速で適切なケアを患者に提供するためには、検査についての知識、特に、検査値の読み方を理解することが重要です。多くの場合、臨床検査室から送られてくる検査データを最初に目にするのは、医師ではなく看護師ですが、治療上問題となりうる検査結果を読み取り、それを医師に報告できなければ、患者の病状の悪化に繋がる可能性があります。
入江氏は、時々刻々病状が変化する患者に対応するために、看護師は検査結果の正しいアセスメント能力を身につけなければならないと訴えました。

今回の講演を通じて、出席者は、検査において看護師が担うべき役割について再認識することができました。今後は、患者に合ったケアを提供するために、これまで以上に検査の方法や結果に注意を払うことでしょう