学長室便りNo.2 地球の健康(プラネタリーヘルス)を大切に!

新型コロナウイルスは変異を続けながら世界に猛威を拡げています。

自然の猛威を受ける中で、世界中の人々は、今、改めて、自然に学び、自然が生み出す環境、いのちの尊さを実感しています。

私は、この2年間にわたるwith コロナの生活で行動範囲が狭まり、ある時、ふと、身体の動きが鈍ったように感じたため、ウォーキングを始めました。少しずつ歩数を伸ばし、現在は、一日一万歩を日課としています。黄砂が舞う日の空はどんよりと不透明で閉塞感を感じさせられますが、その一方で、肌を切るような寒風の日は、夜空が澄んで月明かりが鮮やかさを増し、「地球に守られている」気持ちに浸ることができます。

コロナ禍で制約の多い、閉塞感のある社会の中で、私も含め、多くの人々が自分のおかれている環境や社会の在り方を改めて見つめなおす機会を得ています。先の述べたように、自然の大切や尊さを感じている人は多いと思います。

健康危機の時代を迎え、世界的に「プラネタリーヘルス(地球の健康)」に脚光が当てられています。「プラネタリーヘルス」は、さまざまに定義がされていますが(欄外に一例を示しました)、簡潔に言うと、人も地球のシステムの一部であり、人の健康は地球の健康、つまり環境問題、生態系や自然を含むさまざまな問題と深くつながっていることをいうものです。わたしたちは、自分や家族の健康は個人の問題と捉えがちですが、地球と人間は別々な存在ではなく相互依存関係にあることから、自分が健康であるためには、地球の健康を考えなくてはなりません。

本学は、赤十字の人道理念のもと、「人間のいのちと健康、尊厳を守らなければならないし、苦しんでいる者は、敵味方の別なく救うことを使命とした専門職の育成」をめざしています。一人一人の生命を地球の健康・いのちと捉えて、未来への持続性や潜在性を視野にいれた看護が展開できるように、広い視野からの教育に力を注いで行きたいと考えています。

皆様、地球の中での自分を感じ・取り戻すことを日々の生活にとりいれつつ、新しい年を希望とともにお迎え下さい。

*プラネタリーヘルスとは、「人類の繁栄を限界づける地球環境に対して多大な影響を及ぼしている人間の政治経済、社会システムに対して真摯に向き合い、文明化された人の健康と地球環境の密接な状態の関係に注目することを通して、健康、福祉の増進と公平な社会を目指すこと」とされています。(一般社団法人 日本国際保健医療学会 国際保健用語集より)