オンラインで「ビブリオバトル」を開催しました

2020年11月10日にビブリオバトル(知的書評合戦)を開催しました。ビブリオバトルとは、発表者たちがおすすめの本を持ち寄り、1人5分の持ち時間で紹介した後、発表者と観客が一番読みたくなった本(チャンプ本)を投票で決定する書評会です。今回は初めてのオンラインによる開催となりました。
当日は本学の学生や教職員、宗像市民の方々など、31名の参加者がオンライン上に集まりました。

発表者は、1年生の宮原さん、榎本さん、丸山さん、2年生の峯さんの計4名でした。

1番手は、1年生の宮原さん。おすすめの本は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』です。幼い頃から兵士として育てられた主人公ヴァイオレットが、終戦後、多くの人と出会い成長していく物語です。戦争で両腕を失い、人間らしい感情を持っていなかった彼女が、代筆屋という仕事を通して、人を愛するという感情をどのように獲得していったか、その過程が美しい情景とともに描かれています。「愛しているという感情は曖昧なものだが、とてもかけがえがなく本当に綺麗なものだ」と感じた宮原さん。この本を読んで、すぐにご両親へ手紙を書いたそうです。

2番手は、1年生の榎本さん。おすすめの本は『少女たちがみつめた長崎』です。長崎の高校生たちが被爆者の話を聞き、当時の日記を読む中で、長崎への原爆投下という事実を風化させないために自分たちに何ができるのかを考え、行動していく記録です。いのちの尊さについて考える原点になる本であり、コロナ禍から派生した日常生活の変化やさまざまな差別など、現代にも通じる問題を考えるきっかけとなる、と力強く語ってくれました。「原爆投下という歴史を風化させないために何に取り組めばいいと思いますか?」という司会の阿部先生の問いかけに、「被爆者の方が高齢化する中、その人たちの実際の声を聴くことが大切。まずは聴くことから始めるべき」との言葉が印象的でした。

3番手は、1年生の丸山さん。おすすめの本は『か「」く「」し「」ご「」と「』です。中学、高校で経験した「朝読書」の中で一番心に残った本とのこと。著者は映画「君の膵臓を食べたい」の原作者です。「特別なちから」を持つ5人の高校生が紡ぐありふれた日常の物語ですが、お互いの特殊能力を知らない状況で起こる思いの行き違いがとても面白く、同世代だけでなく大人の方にもおすすめの青春小説だと語ってくれました。また、コンプレックスに関して悩んでいる人の気持ちを楽にさせてくれる本でもあるそうです。質問タイムには、読んだきっかけや、自分の高校生活と比べて共感できる部分など、質問の手が一番多く挙がりました。

4番手は、昨年に続いて2回目の発表となる2年生の峯さん。今回のおすすめは『よい匂いのする一夜』です。小説家の池波正太郎が実際に訪れた温泉やゆかりの宿を再訪して、思い出を振り返りながら旅をしたエッセイです。世の中の移り変わりの中で、100年以上の歴史のある旅館やそのもてなしの心はどのように守られてきたのかを知って感銘を受けた峯さん。今般のコロナ禍で一変した日常で、「幸せ」という感覚を持つことが揺らいでいたが、この本を読んで、一度立ち止まって考えることの大切さ、何百年も揺ぎなく守られてきた伝統に触れて感じる安心感や活力などを感じたと語ってくれました。また、この本に登場する旅館の人や現地の人の温かさや誇り高さが、人情に厚い江戸っ子の著者の筆から伝わってくるのも魅力とのことでした。

発表後、投票により、1年生の丸山さんが紹介した『か「」く「」し「」ご「」と「』が見事チャンプ本に選ばれました。
最後に、小川図書館長から、発表者の魅力あるプレゼンに対する講評とともに、今後、本学でも「朝読書」などの活動を通して読書を広める活動をしていただきたい、との言葉をいただきました。

<紹介された本> ※近日中に図書館に所蔵予定
暁 佳奈『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』京都アニメーション,2015-2016.
渡辺 考『少女たちがみつめた長崎』書肆侃侃房,2020.
住野よる『か「」く「」し「」ご「」と「』新潮社,2017.★チャンプ本
池波正太郎『よい匂いのする一夜』講談社,1986.

2020.11.10オンライン ビブリオバトル_伊東泰子① 2020.11.10オンライン ビブリオバトル_伊東泰子②