国際看護コース 国際保健・看護Ⅱ べトナム研修に参加しました

私たち国際看護コース所属の3年生5名は8月7日から8月13日の7日間にかけて、国際保健・看護Ⅱの授業の一環としてベトナム社会主義共和国にて研修を行いました。今回の研修テーマは「HIV/AIDS感染予防‐高校生への性教育」です。研修ではナムディン看護大学、ナン・ヴァン村ヘルスセンター、ナムディン市内にあるNguwen Khuyen高校、ベトナム赤十字社、ドン・アン診療所を訪問しました。

現在、世界や日本、ベトナムでは新規HIV感染者は減少もしくは横ばい状態にあります。しかし、若年層の新規報告件数は多く減少傾向は見られないことから、性に関心が強く表れる思春期から性感染予防のための知識の普及が重要だと考え、高校生に性教育を行うことになりました。研修前には、HIV/AIDSの病態や治療、感染の現状や持続可能な開発目標(SDGs)、思春期の発達段階などについて事前学習を行いました。

研修2日目、ナムディン看護大学の学生たちと高校生に行う性教育に向けて合同セッションを行い、HIV/AIDSとは何か、感染経路や感染したらどうなるのか、HIV感染をどう予防するかについて話し合いました。ピアエデュケーターとして活動している地元の高校生にも相談し、授業ではHIVの感染経路と感染予防方法に焦点を当ててほしいこと、提示する資料は図を効果的に使用したほうがよいという意見を参考に授業内容を検討しました。英語でコミュニケーションをとることは難しかったのですが、ナムディン看護大学の学生と協力して何とか準備することが出来ました。研修4日目にNguwen Khuyen高校を訪問し、第11学年の50名(男子5名、女子45名)に授業を行いました。ナムディン看護大学の学生とピアエデュケーターの学生がHIVの概要について説明し、その後、男女別のグループに分かれ、感染を予防するためのコンドームの装着を1人ずつ体験してもらいました。コンドーム装着の体験後は各グループでのディスカッションを行いました。女子グループには「コンドームがなく、パートナーにコンドームをつけたくないといわれたら」、男子グループには「コンドームがないがパートナーにつけてほしいといわれたら」というものです。話し合いの結果は様々でしたが、多くの学生はコンドームを装着しないのであれば性交渉はしないという意見でした。授業後、高校生は「こんなに詳しく教えてもらうことはなかった。貴重な体験だった。」「恥ずかしいからあまり話をしないけど、大切な話だとわかった。」という感想を述べてくれました。

研修第3日目、ベトナムの地域医療の実際を知り、医療や看護の役割を考察することを目的に政府保健省の管轄であるナン・ヴァン村ヘルスセンターを訪問しました。ナン・ヴァン村ヘルスセンターではヘルスボランティアと呼ばれる人が1軒ずつ訪問・調査をして、地域住民の健康を把握しています。今回、HIV/AIDSがテーマであったため、HIV/AIDSに対してどのような活動を行っているのかを尋ねたところ、HIV感染が疑われる人はHIV/AIDS予防センターを紹介し、そこで詳細な検査や治療が行われること、感染者の情報を共有しながら地域でも健康管理に努めているということでした。また、ナン・ヴァン村の住民に対しては、HIV/AIDSについてスピーカーで放送したり、ヘルスセンターで集団教育を行うなどの取り組みが行われていました。

研修最終日には、ベトナム赤十字社を表敬訪問しました。コミュニティを中心とした水と衛生に関する事業や血液事業などの活動について説明を受け、保健省等とも協力をしながら国民の健康を維持・増進させる活動を行っていることを学びました。その日の午後はベトナム赤十字社の管轄である一次医療施設のドン・アン診療所を訪問しました。ここは診療所がなかった地域住民の健康を守ることを目的に設置され、所得に応じた診療費での診療や治療、貧しい人の自立を促す支援活動等が行われていました。診療所があることで地域住民が平等に医療にアクセスでき、健康に過ごすことができるよう配慮されていました。

今回、HIV/AIDSをテーマにナムディン看護大学の学生との議論や高校生への授業を通して、他者にわかりやすくHIV/AIDSについて説明することの難しさを実感しました。複雑な内容を簡単に説明するためには、知識を覚える(知る)だけではなく理解できていなければいけないということに気づきました。さらに対象に応じた内容や説明方法を工夫する必要もあり、個別性のある支援の重要性について改めて考え学ぶ機会となりました。HIV/AIDSの新規感染を防ぐためには、高校生など若い世代に対して具体的かつ実践を含めた指導を行うことで、正しい知識と予防方法を身につけることができると考えます。今後、世界でこのような取り組みがさらに増えることを切に願います。

3年生 平石 桂子

  
①ナムディン看護大学の学生との授業内容の検討 ②コンドーム装着の演習風景
写真左:ナムディン看護大学の学生と授業内容を検討している様子
写真右:高校生への性教育の演習の様子
 
③高校生との集合写真
地元の高校生と集合写真