平成30年度 学長室便りNo.2 災害が多発した夏

昨年7月の九州北部豪雨による災害復旧・復興もまだ不十分な中、今年の夏も日本列島は災害続きです。7月6日から8日にかけて襲った西日本豪雨では、福岡、広島、岡山、愛媛などの1府10県に大雨特別警報が出されました。大雨特別警報は気象庁によれば、「数十年に一度の重大な災害が予想される」というものですが、その通りの甚大な被害が起きてしまいました。8月には、例年よりも多くの台風が発生し、9月4日は台風21号が大阪や京都を襲い、関西国際空港は1週後の現在も半分程度の稼働状況です。そして、6日未明には震度7の北海道胆振東部地震が起き、日本で初めてブラックアウトという大停電が北海道全体に起きました。
こうした大災害のたびに、多くのかけがえのない命が失われています。突然に、なんの心づもりもなく人生を終えなければならなかった人たちの無念さは、計り知れません。本当に心の痛む思いです。お亡くなりになられた方々、ご遺族の方々に対して深い哀悼の意を捧げます。また、大切な生活の場が瞬時に破壊され、復旧もままならない中で、不便な避難生活を送っている多くの被災者の方々にも心からのお見舞いを申し上げます。
日本赤十字社では各県支部を中心にして、被災地での救援活動を懸命に行っておりますが、本学からは教員1名が福岡県看護協会からの災害支援ナースとして広島県に派遣されたところです。学生は1名がボランティアとして兵庫県に入ったとのことですが、いずれの被災地も遠隔地のため、熊本地震の時のような組織的、継続的な取り組みは難しい状況です。
かつて、寺田寅彦は「天災は忘れた頃にやってくる」と言いましたが、最近では忘れないうちに災害が起きるようになってしまいました。いつ災害が起きても、適切に対応するための準備をしておかなければなりません。そこで本学では、危機管理委員会と熊本地震を契機に立ち上げた研究班合同で、8月30日の夕方17時から19時過ぎまで、災害対策本部を立ち上げて初動対応をする訓練を行いました。その様子を少し紹介しましょう。
訓練は「宗像市を震源とする震度6強の地震が発生しました。学生は安全な場所へ避難をしてください。教職員は事務室に参集してください」との一斉放送から始まりました。教職員24名が参集したところで、災害対策本部の設置を本部長である筆者が宣言し、マニュアルに沿いながら、組織・役割分担をしました。
そして、全学生と教職員の安否確認(メール配信)、建物の被災状況確認、負傷者の状況確認、本部としての経時的記録などを指示しました。間もなく、負傷した学生が本部に来て、「講義棟のガラスが割れ、学生2名が怪我している」とのことで、この学生の手当と2名の学生の救助を指示。図書館では、学生1名が落下した本の下敷きになっているとの情報も入り、職員に救助を指示するなど、訓練とはいえ臨場感が高まってきました。ライフラインの被災状況確認では、JRも西鉄バスも不通とのこと、トイレの水が流れず電気も点かないとの情報が入り、簡易トイレの準備を指示。保護者から大学に「娘との連絡が取れないので大学にいるかを確認したい」との電話が入ったり、「自分の子どもが心配なので帰宅したい」という若手教員が現れたり、ますます現実味を帯びた出来事が次々と立ち現れてきました。さらには、宗像市から地域住民の受け入れ要請の電話があり、すでに大学に数十人が向かっている、その中には車いす使用者もいるという情報。これに対して、どこに受け入れが可能か・・・体育館?オーバルホール?レストラン? これら施設の被災状況と合わせて判断を迫られることも生じてきました。帰宅困難学生や教職員の夕食の手配、夜間の休息対応、明日の休校措置の決定と学生・教職員への連絡、日本赤十字社や県支部、日本赤十字学園本部との連絡なども・・・。最後に、評価者から講評を受け、訓練参加者がそれぞれ気付いた改善点などを述べあいました。学生からは「学生をもっと使ってほしい。倉庫から備蓄食料を運ぶことなど自分たちでもできる」との意見も聞かれ、大変心強く思いました。
訓練とはいえ、災害対策本部が被災の全体状況を早期に把握し、人と物、ライフライン、情報などを駆使して、その時点での最適な判断をして対応すること、引き続き起きると思われる事態の予測や予防的な措置を適時に実施すること等々、わずか2時間ではありましたが大変多くのことを学んだ貴重な体験でした。今後は、この訓練での教訓をもとに危機管理マニュアルの修正・追加など、本学としての災害対応を充実させていくつもりです。
いつ、誰が、どこで、どのような災害に遭遇するか、誰も予測することはできません。でも、災害が起きる頻度が高くなっているように思われる時代です。「自分の命は自分で守る」という原則は、何度も聞いていると思いますが、学生の皆さん、3日間程度の食糧と水、防災グッズの準備、避難場所と経路の確認など、心して生活をいたしましょう。