平成29年度 学長室便りNo.5 卒業式・学位授与式 学長式辞

ただいま卒業証書、学位記を受け取った看護学部卒業生102名、大学院看護学研究科修士課程修了生13名の皆さん、誠におめでとうございます。皆さんは入学以来、真摯に学業に励み、研鑽の結果それぞれの課程を修了し、めでたく本日を迎えられました。また、これまで学生たちの成長を温かく見守り、支えてくださいました保護者の皆様方にも心からのお祝いを申し上げます。

本日はご来賓といたしまして、福岡赤十字病院院長 寺坂禮治様、日本赤十字社看護師同方会福岡県支部長 松永由紀子様、本学同窓会遥碧会会長 池田尚大様をはじめ、本学の教育・運営に多大なご協力をいただいた関係者の皆様のご臨席を賜りまして、平成二十九年度日本赤十字九州国際看護大学の卒業式・学位授与式を挙行できますことは、まことに喜ばしく、教職員一同、厚く御礼を申し上げます。

看護学部卒業生の皆さん、日本赤十字九州国際看護大学での学生生活はいかがでしたか? リベラル・アーツや看護学を学ぶことの面白さや楽しさと同時に、学問することの厳しさも経験したことでしょう。時には、自分は看護に向いているだろうかと悩んだ日々もあったかと思います。また、サークル活動やボランティア活動等を通じて、信頼できる生涯の友人も作ることができたに違いありません。二十歳を挟んだ青年期の多感な時期を本学で過ごしたことは、皆さんの生涯にとってかけがえのない貴重な時間になったことと思います。

ここで今一度、本学のディプロマ・ポリシー、学位授与の方針を思い起こしてください。

必要な単位の修得に加えて、5つの能力を身につけた者に学位を与えることとして掲げています。それは、「人間の尊厳と権利を擁護する力」、「自己教育力」、「チームで働く力」、「問題解決力」、そして「看護の専門性を探求する力」の5つです。これらの力を身につけた証として卒業証書があるということです。

特に最初の「人間の尊厳と権利を擁護する力」は、本学の教育が赤十字の「人道」の精神・理念に基盤を置いていることと固く結びついています。その根幹は、あらゆる状況において人間の苦痛を予防し軽減するために努力し、生命と健康、尊厳を守るという「人道」の精神の実現にあります。

現在、地球温暖化や地殻活動の活発化など、地球規模の問題が指摘されています。これと呼応しているのか、わが国でも大規模な自然災害が数多く発生しています。皆さんが入学後、この九州だけでも、火山の相次ぐ爆発、熊本地震、九州北部豪雨が起き、数多くの尊い命が失われ、生活基盤を失った被災者は今も仮設住宅などで暮らしています。地震、豪雨災害の発生後は、皆さんは3年生あるいは4年生として、「赤十字の看護学生として、自分たちに何ができるか」と学生復興支援委員会を自主的に立ち上げ、被災者支援活動を積極的に取組みました。私はこの活動を近くで見ながら、赤十字の人道の精神が学生の中に深く浸透していることを実感し、その行動力は本学の誇りだと思いました。

被災者支援活動は、現在では一,二年生までを巻き込んだサークル「KDNS」(Kyushu Disaster Nursing Study group)として、継続的な活動がなされています。皆さんの活躍は、本学の歴史に新たな1ページを加えた素晴らしいものといえます。

多くの卒業生は、看護師として四月から臨床看護の場に身を置き、大学で学んだことを活かして、日々尊い命に寄り添うことになります。大学院に進学して、助産師や保健師の資格取得を目指しつつ、看護学をさらに深めていく人もいます。これからの長い人生では、順風満帆を願っても、時には心が打ち砕かれそうな挫折を経験することもあるかもしれません。そのような時であっても、支えとなる周囲の人々の力も借りながら、自分自身の選択や生き方を大切にして、真摯に向かい合ってください。そうして、自分の夢をこの日本で、また世界の舞台で実現させてください。

先日終わったピョンチャン・オリンピックのメダリストの中にも、苦しみや挫折、大けがを負った選手が大勢いました。今少し、思い出してみてください。スピードスケートの高木選手、菊池選手、ジャンプの高梨選手、フィギュアスケートの羽生選手、他にも数人いました。オリンピックでの彼らの大活躍と絡めて、私は卒業生の皆さんに、はなむけの言葉を贈りたいと思います。

「意志あるところに道は開ける」。これは、アメリカ第十六代大統領リンカーンの言葉です。ご自身の夢の実現に向けて、どうか心に留めてください。

大学院修士課程を修了する皆さん、皆さんは二年間あるいは三年間の学究生活を終え、研究者として、また助産師として求められる基本的な資質を身に付けることができました。特別研究、課題研究ともに、研究の面白さや発見の喜びを味わったことでしょう。同時に研究の厳しさも味わい、立ち止まることも多かったかと思いますが、先週行なわれた修士論文発表会では、皆さんの研究成果が立派に、そして誇らしく報告されました。丁寧なインタビューに基づく質的研究、多変量解析を用いた量的研究、そのいずれもが看護学教育や看護実践の改善に示唆を与えるものでした。ほとんどの皆さんは再び臨床の場に戻りますが、修士の学位を有した看護師として、看護研究やスタッフ教育において力を発揮してくださることを期待しております。

今年の修了生には、四月から博士課程に進む人もおりますが、多くの修了生の皆さんも近い将来、ぜひ博士課程への進学を考えてくださるよう願っております。

卒業生、修了生の皆さん、皆さんは日本赤十字九州国際看護大学の誇りであり、未来への希望です。看護職は世界中どこでも必要とされる専門職です。本学のキャッチフレーズ、「一人を看る目、その目を世界へ」を胸に、この学び舎を飛び立ち、自由に大きく羽ばたき、豊かで幸せな人生を送ってくださることを強く願っております。

最後に、本日ご臨席いただきました皆様方のご健勝とご発展を祈念いたしますとともに、多くのご指導を頂きました施設の指導者・管理者の皆様、学習や生活を支えてくださった地域の皆様に心からの感謝を申し上げまして、私の式辞といたします。

平成三十年三月六日
日本赤十字九州国際看護大学
学長  田村 やよひ