国立台中科技大学との異文化間コミュニケーション・ジョイント研修プログラムに参加しました

   2月6日から10日までの5日間、本学の科目「異文化間コミュニケーション」の履修生32名が、台湾の台中市を訪問し、国立台中科技大学の看護学科生32名に日本語学科生8名の計40名と異文化交流を行いました。
   プログラム構成は、異文化理解と英語のコミュニケーション技能を高めることを目的とし、双方の文化や歴史あるいは大学をトピクスにお互いを紹介するセッション1、両社会における問題を提題するセッション2、それらの社会問題の解決策を討議するセッション3から成るプレゼンテーション & ディスカッションを研修活動のコアとしています。また、看護学・助産学教育施設見学・体験学習、健康科学の理念の下、国際医療ツーリズムの受け入れ、フランスやイタリアの専門医と提携し遠隔手術技術を訓練する最先端医療施設・研究所を持つ病院の見学、古い台湾の街並みを残す鹿港探訪などが組み込まれ、学生の自主性と創造性を尊重し、自己管理能力を育むと同時にチームで協働する活動が多く設定された学生主体の研修プログラムです。
   社会問題を発表し討議するセッション2では、少子高齢化、過重労働・過労死、子どもの貧困化、晩婚・未婚化などの問題が提題され、両社会は共通する問題を抱えていることがわかりました。私の班では、子どもの貧困とその対策について発表・討議しました。国民総生産(GDP)でみると日本は世界第3位(2017年)の経済大国です。しかし、子どもの貧困率はOECD加盟国34カ国中世界ワースト9位(2017年)と、貧困率の世界平均値を上回る深刻な状況です。このような生活困窮家庭の状況に対して、日本では無料または安価で、しかも栄養価と季節の味が配慮された家庭的な食事を提供するこども食堂の取り組みが行われていることを紹介しました。
   一方、台湾では政府が低所得者データを収集し、食糧チケットを給付するサービスが提供されているそうです。そのチケットを近くのコンビニに持っていくと、廃棄予定だがまだ食べることのできる商品と交換してもらえるしくみになっています。台中科技大生は、この制度は空腹なこどもたちを減らすだけでなく、廃棄物を減らすことにも繋がるメリットがあることを指摘していました。
   この問題を台中科技大生と討議するうちに、両国における貧困家庭の子どもの食を支援する取り組みの背後には文化の違いもあることに気づきました。外食産業やコンビニが普及している日本においても、家庭で料理を作り、家族とともに食事をとることがまだ一般的です。また、そうすることが家族であるという意識も残っています。そのためこどもが1人でコンビニのお弁当などを買う姿を見ると、あの子の親は食事を作ってやらないのだろうかと心配したり、親を非難したりしがちです。
   一方、台湾には屋台が豊富にあり朝から営業されていて、基本、食事は家庭では作らずに、屋台で買って食べるのが伝統的な習慣となっているそうです。そのため子どもが1人で料理されたものを買いに行くことは普通のことなので、支援策としての日本のこども食堂のような発想が生まれないのかもしれません。このように、社会問題やその対策にも文化の違いが潜んでいることに驚き、非常に興味深く感じました。
   また、この研修中のコミュニケーション活動で、とりわけ印象に残ったのが、台中科技大生の一言です。「あなたは英語が上手ね。ジャパニーズ・アクセントがない。どうして?」と聞かれ、「小さい時から英語を習っていたからかな。でもまだ流暢には話せないんだ。」と言うと、「(英語の非ネイティブなら)誰だって一緒なんだから、そんなの気にすることないよ。」と、言われました。私も含め、英語を話すことに大きなハードルを感じている日本人は少なくありません。しかし、そのハードルは英語をネイティブのように完璧に話さなければいけないという意識から生まれるのではないでしょうか。台中科技大生の一言は、たとえネイティブのように話せなくても、伝えようと積極的に話すことが大切なのだと私に気づかせてくれました。
   この研修に参加して、日本と台湾の文化や考え方の違いを多々実感すると同時に、今後の英語学習に対する意識を新たにすることができました。そして何より、台中科技大生とかけがえのない時間を過ごせたことは一生忘れられない思い出です。この研修に関わってくださった皆様に心から感謝します。

2018.02.26①異文化コミュニケーション 2018.02.26②異文化コミュニケーション
<写真左:異文化間コミュニケーション・ジョイント研修開校式>
<写真右:日・台の社会問題の解決策についてプレゼンをする台中科技大看護学科生>

2018.02.26③異文化コミュニケーション 2018.02.26④異文化コミュニケーション
<写真左:社会問題の解決策を討議する両大学のジョイント班>
<写真右:台湾の歴史的な街並みが残る鹿港を探訪する両大学生>

1年生 増元さち