平成29年度 学長室便りNo.4 救急看護認定看護師教育課程の修了式を終えて

早いもので、2017年も残すところ10日を切りました。今日、12月22日は、本学の看護継続教育センターで8年前より取り組んできた、救急看護認定看護師教育課程の修了式の日でした。この教育課程は、管理棟2階で講義をし、病院での実習も多いので、学部学生や大学院生と出会う機会も少なく、あまり身近なものではないと思われます。

本学では今年度から、大学院の修士課程にクリティカルケアの専門看護師コースを開始したことから、救急看護認定看護師教育課程は今年度限りとなりました。このため、修了式での式辞をここに掲載することにしました。読んでいただければ、どのような看護師が受講しているのか、8年間の教育の成果がどのようなものかもお分かりいただけると思います。

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本日、めでたく、日本赤十字九州国際看護大学看護継続教育センター 救急看護認定看護師教育課程を修了される 29名の皆様、誠におめでとうございます。心からのお祝い申し上げます。

皆様は、救急看護の実務経験を長い方で13年、短い方でも5年という実績を持ってこの認定看護師教育課程に入学していらっしゃいました。そして、7か月間675時間の授業を、学内外の47名の専門家による講義と、九州、中国四国、関東などの17施設での実習を行い、その集大成とも言えるケースレポート発表会、続く修了試験を見事に遂行されました。伺うところでは、皆様の平均年齢は37歳とのことです。学ぶことの面白さや充実感を味わったと同時に、20歳前後の頃の学習とは異なる難しさも感じたに違いありません。しかし、私は何よりも、皆様の強い向上心とたゆまぬ努力に大いに敬意を表します。

先日のケースレポート発表会には私も一部ではありましたが、参加させていただきました。その後、抄録集や論文集を拝見し、報告事例の多様さ、困難さに圧倒される思いでした。そして、数多くの救急患者のアセスメントを導くツールや患者・家族を支えるケアの理論を使いこなしている皆様の力量に目を見張りました。1995年から始まった救急看護認定看護師の教育は、20年余りを経てこのレベルにまで達したのかと、制度創設に多少、関わった人間の一人として深い感慨を覚えました。

さて、2025年の超高齢社会に向けて、国の医療政策は大きな変革の最中です。具体的には病院機能の更なる分化と再編、在宅医療の充実、地域包括ケア体制の構築が推進されております。都道府県が策定した地域医療構想においては、高度急性期、急性期医療を担う病床が削減されていますので、皆様には、救急患者に対する集中的で効率的な看護の提供と、退院後の生活支援に向けた多職種間連携を図ることが求められていると言えます。

このような医療の大きな転換期の只中にあって、救急看護認定看護師は全国で1,200名を超える方々が活躍中です。本学ではこれまで207人の救急看護認定看護師を送り出してきましたので、約6人に1人は本学の修了者ということになります。福岡県内では67名中51名、九州8県でみても181名中127名は本学の修了者で、いずれも7割を超えています。どうか修了生の皆さんが、この宗像にある赤十字精神に基盤を置いた看護大学で学んだという繋がりを大切になさって、大勢の先輩たちとともに切磋琢磨し、その技量を高め、救急看護の発展に貢献されますことを祈念しております。

なお、本学の認定看護師教育課程には、災害時急性期の看護実践力を高めるための特別に付加したカリキュラムがありました。昨年の熊本地震、今年の九州北部豪雨に代表されるように、天災は“忘れないうちにやってくる”昨今、災害時急性期の看護は社会的にも大変重要性が高まっております。日本赤十字社は創設以来、災害救護活動を担ってきた歴史があり、その成果も皆様に十分に伝えられたものと思いますが、職場に戻ってからも、折に触れて、災害時急性期の看護についてもさらに学びを深めていただきたいと願っています。

そして、数年間の実践の後、さらに学問を深めて専門性を追求したい、臨床でもっと広い役割を担いたいと考えるようになりましたら、ぜひ本学の大学院看護学研究科に進学してきてください。今年度から設置しましたクリティカル看護専門看護師コースに皆さんが戻ってくることを、山勢教授を始め、本学教職員全員が待っております。

最後になりますが、本学における救急看護認定看護師教育は、今年度で休講といたします。8年間の長きに渡って、本教育課程の運営にご尽力、ご協力いただきましたすべての講師の先生方、医療施設の管理者の皆様、臨床の指導者の皆様方に厚く御礼を申し上げますとともに、ご発展とご健勝をお祈り申し上げます。さらに、修了生の皆さん全員の認定試験合格と今後のご活躍、そしてお幸せを願って、修了式の式辞といたします。

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本日、修了された方々の多くは、明日もしくは明後日には救急医療の現場に立っていることでしょう。7か月間もの長い期間、不在にしていたことを埋め合わせるように、年末年始も勤務するのかもしれません。研修を終えて、再び臨床の現場に立った彼・彼女らは以前とは異なる看護師としての判断や働き方をしてくれるに違いありません。

新しい年を迎えると同時に、新しい自分になる・・・。素敵なことですね。学生の皆さんも新しい年を元気にお迎えください!

 

学長 田村 やよひ