高齢者を理解するために擬似体験を行いました

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2年生になって始まった科目「高齢者と看護Ⅰ」の中で、高齢者擬似体験を行いました。この演習は、高齢者を身体的・心理的・社会的に理解し、適切な援助方法を考えることを目的としています。擬似体験は、体験用スーツと視覚障害用のゴーグル、耳栓、杖、手袋を装着して行うものです。これらを装着すると白内障や視野狭窄という視覚機能の低下や難聴、脊椎湾曲症(背中が丸くなっている状態)、全身の筋力低下、手先の機能の低下がある80歳代の高齢者を擬似体験することができます。学生は3~4人でグループを構成し、それぞれが高齢者役、看護師役、観察者役を体験しました。看護師役は高齢者の様子を見ながら適切な援助を実施し、観察者役は高齢者・看護師役両者の観察から、看護の適切性についてフィードバックを行いました。

高齢者の体験では、設定された高齢者の身体的な苦痛を実感し、日常的に見かける高齢者の動作を理解する声が聞かれました。また、身体的苦痛から不安や孤独などの心理的問題が生じることや、動作が億劫になることによる「ひきこもり」という社会的問題に気づき、それらが単独ではなく複合的に存在することを理解していました。

看護師役の体験では、適切な援助を行うためには高齢者理解が重要であり、「高齢者の可能性や自立性を促進するためにどこまで援助すべきか」について、見極めることの難しさと必要性を実感していました。

観察者役は高齢者や看護師役の動きから「危険回避や安全確保の援助が未熟であった」と感じ、高齢者が移動する先の環境を整えることや適切な言葉かけの重要性を指摘していました。また、危険な状況は複数同時に起きているものの、看護師役は1つのことに注意を払う傾向があり、他の危険に気づいていないことも指摘していました。

この演習における様々な役割体験によって高齢者の理解や適切な援助を考えるとともに、今後の援助方法に対する課題もみえたようでした。7月には初めて患者さんを受け持つ実習が始まります。患者さんの多くは高齢者ですので、この科目によって加齢を学問的に理解し、自立性を尊重した援助をして欲しいものです。