コソボ、ケニア、フィリピン、ネパールなど9か国14名の専門家を対象としたJICA集団研修「保健人材育成-地方村落における地域保健-」の閉講式を行いました

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コソボ、ケニア、フィリピン、ネパールをはじめ9か国から14名の保健専門家を受け入れて、2月15日から行っておりましたJICAの集団研修が、3月14日に閉講しました。閉講式では14名の研修員たちが正装してJICAの河添研修業務課長から一人一人修了証を手渡され、晴れやかな笑顔で記念写真に納まりました。長いようであっという間に過ぎた研修期間中に、研修員同士、また、本学の教員や学生、JICAの担当者との間に、堅固で暖かいteam spiritが芽生えました。去りがたい思いと、この研修の成果を自国で生かそうと逸る思いを胸に、14名はそれぞれの国に帰っていきました。

一か月に及んだ研修では、講義を聴くだけでなく、医療関連施設や行政・教育の施設を見学したり、宗像市の誇るごみ処理施設や宗像大社を訪れたりし、3週目の終わりには神戸まで足を伸ばして震災ミュージアムや最先端の企業を見学しました。クライマックスは、3月の13日に行われた「アクションプラン発表会」です。14名が、今回の研修から得た成果を生かしてそれぞれの国の改善を図る計画を立案し、それを発表するのです。14の発表は、国情の違いもあり、規模にはいささかの濃淡が見られましたが、どれも真摯な努力のあとと知性の輝きが見られる素晴らしいものでした。

今回の参加者たちについて特筆すべき点は、他者の意見を大いに歓迎する態度があり、集団としてのダイナミズムが非常に大きな成果を上げていたことです。研修員同士や保健専門家の意見はもちろん、医療保健を専門としない教員の意見も、学生の意見も、大いに興味を持って聞き、英語があまり得意でない人も一所懸命に自分の見解を述べ、それに誰もが辛抱強く耳を傾け、意見を述べる…発表会に先立って行なわれた意見交換会でも、実に活発なコメントの応酬が見られ、それが計画の精緻化として結実していきました。このように、本当の学びが生ずる場を目撃することは、何にもまして幸せな経験でした。今回の研修は、後期授業を終えた学部生や大学院生が聴講させてもらったのですが、彼女たちは本当によい経験をしたと思います。

短い間に友情を育んだ研修員たちが、あるときは真剣に討議し、あるときはにこやかに冗談を言ってふざけあっている姿は、インターネットが発達した世の中であっても、人と人とが一堂に会して時間を過ごすことがいかに大切かを教えてくれました。目的を同じくする者同士が真剣に心を通わせる営為を続けていくことが、本当の平和の礎になるに違いありません。日本の経済状態の悪化によって国際的事業も縮小していく傾向にありますが、このような有意義な出会いを提供し続けられる日本でありたいと心から思います。

今回の集団研修は、国際の分野では日本でも有数の活動実績を持つ本学学長喜多悦子氏が学長として迎える最後の研修でもありました。学長の話術は独特で、想像もつかない突飛な質問に煙に巻かれて戸惑っているうちに、あっという間に問題の核心へと連れて行かれるのです。げらげら、くすくす、笑っているうちに、いつのまにか、ひんやりと身に染みる知恵の水に手が浸されている…学長の御講義に研修員たちも魅了され、学長と出会えたことを心から喜んでいました。

春は旅立ちの季節、別れの季節。しかし、別れは別れではなく、次の新しい出会い、懐かしい再会に向けての一区切りです。研修員のみなさん、また会いましょう。喜多学長、また、ぜひ、私たちを煙に巻きにいらしてください。